キックボクシング42戦無敗を誇る人気格闘家の那須川天心(24=帝拳)が9日、東京・後楽園ホールで日本ボクシングコミッション(JBC)のB級(6回戦)のプロテストに合格した。

4月に6回戦でプロデビューし、ボクシングで世界の頂点を目指す。

キックボクシングで頂点を極めた後、プロボクシングに転向して世界王者になった選手は、世界では珍しくない。特に際立つのがタイのムエタイからの転向組の活躍だ。

象徴的な存在がムエタイのスーパーライト級王者として無敵を誇ったセンサク・ムアンスリン(タイ)。74年11月のプロボクシング転向初戦で世界ランカーに衝撃的な初回KO勝ちを収め、8カ月後のプロ3戦目にWBC世界スーパーライト級王者ペリコ・フェルナンデス(スペイン)を8回KOで撃破して世界王座奪取して世界を驚かせた。ちなみに3戦目での世界王座奪取は今も最短記録で、通算8度の防衛に成功している。

世界王者として一時代を築いた辰吉丈一郎や西岡利晃、長谷川穂積と激闘を繰り広げたウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)も、もともとはムエタイで3階級制覇したスター選手だった。94年12月にプロボクシングデビューすると、翌95年9月に4戦目でダオルン・チュワタナ(タイ)に判定勝ちしてWBC世界バンタム級王座を獲得。初防衛戦で敗れたが、98年12月に辰吉に6回KO勝ちして同王座に返り咲いた。同王座は長谷川に敗れるまで14度防衛した。

パンチと多彩な蹴りを駆使するキックボクシングと、拳だけで殴り合うボクシングでは、一般的に構え方やスタンス、防御のやり方、重心移動などさまざまな違いがあり、対応できるまで時間がかかると言われるが、キックで頂点を極めた選手たちは、もともと卓越した格闘技センスがあるため、対応力にも優れ、実戦経験も豊富なため、試合慣れしているというメリットも大きい。

那須川のプロテストを見た元WBA世界スーパーフライ級王者で日本プロボクシング協会のセレス小林会長は「キック出身の選手は癖がある選手が多いが、那須川選手は短期間でこれだけボクシングに対応してくるのだからセンスがある。プロの戦い方に慣れてくれば、もっとパフォーマンスが上がる。世界チャンピオンになるチャンスも十分にある」と太鼓判を押した。【首藤正徳】