元年俸120円Jリーガーで20年末から格闘家に転向した安彦考真(45)が結婚したことが30日、わかった。31日中にも安彦本人から発表される。

相手はサッカー選手時代に知り合っていたプロダンサーを目指していた経歴も持つ真佐美さん(34)。

格闘家デビュー戦などの入場時を盛り上げるダンスを任せるなどして親交を深め、昨年のクリスマスイブにプロポーズ。一粒万倍日と天赦日などが重なる縁起の良い日とされ、格闘家としての試合後に観客と合唱する「3・2・1 Vamos!」のかけ声にもかけた3月21日に都内の区役所に婚姻届を提出した。

“挑戦モンスター”として戦いを続ける安彦が、最愛の伴侶を手にした。相手の真佐美さんについては「お互い夢を思いきり目指していたところが同じ似たもの同士」と語る。

安彦は高校3年時に単身ブラジルへ渡り、19歳で地元クラブとプロ契約を結ぶなど雑草魂でサッカー留学に励んだ経験がある。

真佐美さんも地元の北海道を離れて高校から香川県にダンス留学してプロダンサーを目指していたといい「僕らの場合は足りないものを補い合うのではなく、同じ方向を向いて歩んでいける関係性です」と話した。

本能のままに思いを伝えた。真佐美さんは結婚を機に3月下旬に上京するまで北海道・砂川市で暮らしていた。毎日の電話が日課となる遠距離恋愛で、安彦は昨年のクリスマスイブに砂川市までサプライズで足を運んでプロポーズ。雪の積もる砂川の街で、安彦からの電話を機に家から出た真佐美さんにひざまずいて指輪を差し出した。

ロマンチックな場面となるはずだったが、薄暗い家の敷地の中で、急に「真佐美ちゃん」と男に声をかけられた真佐美さんは「きゃあっ」とその場で腰を抜かしてしまったという。「電話で『今からミーティング』と言っていたので、頭の中がパニックでした」(真佐美さん)。“急襲”をわびつつあらためてプロポーズし、晴れて結ばれた。

安彦は「人はいつ死ぬかわからないので、今、手に入れたいと思ったものはその時に手に入れるべき」と熱弁し「ほしいもの、やりたいことはその瞬間にやる。今回もそうでした」と語った。交際はサッカー選手時代の20年8月からで、約2年半の遠距離恋愛を実らせる形に。お互いに再婚であったことも理解のきっかけになった。

真佐美さんは安彦について「この人と一緒だったら、どんな状況でも幸せに、楽しみながらこえていけると思いました」と明かした。好きな部分は「どんどん引っ張っていくような男らしいところ」とし「言ったことは必ずやり切りますし、遠距離恋愛中もどんなに疲れていても連絡をマメにしてくれる。レディーファーストですね」とほほ笑んだ。

3月26日に安彦が出場した東京・有明アリーナで行われた格闘技イベント「RISE ELDORADO」の試合も真佐美さんは安彦の両親らと共に客席で見守っており、惜しくも敗れたが「かっこよかった。エネルギーが私のところまで届いてきたよ」と声をかけられた。

約1週間前から都内で同居しており、試合前の減量期も、約3年前からヴィーガン(完全菜食主義者)生活を始めた自身に会わせた食材を食卓に並べてくれていた。安彦は「あまり知識のないところからヴィーガン食も作ってくれて、本当にありがたい」と感謝した。

これからも歩みは止めない。3月31日は、5年前に安彦がJ2水戸ホーリーホックでプロ契約書にサインし、幼い頃からの夢をかなえた思い出の日。

「家族も増えますが、僕は守りに入るより、より攻めていく」とさらなる“挑戦”への意欲もたぎらせ「僕が自分の人生を輝かせることが家族のためにもなると思っているので。先頭で走って背中で見せていきたい」。

格闘家として掲げる大目標は、大みそかのRIZIN出場。家族の支えも力に変え、夢の景色を全員でつかみとる。【松尾幸之介】

 

◆安彦考真(あびこ・たかまさ)1978年(昭53)2月1日、神奈川県生まれ。高校3年時に単身ブラジルへ渡り、19歳で地元クラブとプロ契約を結んだが開幕直前のけがもあり、帰国。03年に引退するも17年夏に39歳で再びプロ入りを志し、18年3月に練習生を経てJ2水戸と40歳でプロ契約。出場機会を得られず19年にJ3YS横浜に移籍。同年開幕戦の鳥取戦に41歳1カ月9日で途中出場し、ジーコの持つJリーグ最年長初出場記録(40歳2カ月13日)を更新。20年限りで現役を引退し、格闘家転向を表明。21年4月にアマチュア格闘技イベント「EXECUTIVE FIGHT 武士道」で格闘家デビュー。プロとしては22年2月16日にRISEでデビューを果たした。プロ格闘家としては通算2勝1分け1敗。175センチ