ボクシング4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(30=大橋)がダブル「区切りデー」を迎え、大舞台への思いを明かした。14年4月6日のWBC世界ライトフライ級王座獲得から6日で丸10年が経過。5月6日、東京ドームでWBC世界同級1位ルイス・ネリ(29=メキシコ)の挑戦を受けるまでも、残り1カ月となった。世界王者であり続けた10年、そして元世界2階級制覇王者ネリとの注目対決に向けた現在の心境を口にした。
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世界トップで戦い続けた井上が、世界王座獲得から10年の節目を迎えた。14年4月6日、当時国内最速の6戦目でアドリアン・エルナンデス(メキシコ)を6回TKOで撃破し、初めて世界王座を奪取。以後、日本人初の4団体統一、史上2人目の2階級での4団体統一と多くの栄冠を手にし、記録を塗り替えてきた。
井上 4月6日は、僕にとっての誕生日のようなもの。感慨はある。ただ、言われて10年なのだと気付きました。やるべきことを突っ走ってきたら10年が経過していましたね。
階級変更による王座返上でベルトを持っていなかった期間は合計で約11カ月間。世界王者として挑戦者、王者を撃破し続けた「絶対王者」の10年間だった。
井上 この10年、特にプレッシャーを感じることはなかった。試合前ごとに感じる重圧はありますけれど、世界王者であるべきプレッシャーは特になかった。(ライバルに)追いかけられるような気持ちもなかった。強くありたいという気持ちがでかい。満足し切っていないので、追求し続けられる。達成感、満足感が出てきたら、ここまでたどり着けていない。それはこれからも変わりない。
濃厚な10年間。思い出に残る試合、シーンを1つに絞り込み、挙げることはできないという。
井上 あの時こうだったとか、1試合1試合に思い入れがあり、1つ1つが作品みたいなもの。ただ、まだ10年。振り返らなくていい。まだまだ先がある。
ちょうど1カ月後に大舞台を控える。90年の元統一ヘビー級王者マイク・タイソン戦以来、34年ぶりの東京ドームでのボクシング興行で、かつ日本人初のメインイベンターとして、リングでネリを迎え撃つ。
井上 ネリ選手が相手で、東京ドームでやれること、それが自分の中でプラスに働いている。
先月20日から練習パートナーとしてWBA世界同級11位ケビン・ゴンサレス(26=メキシコ)、元全米アマ王者で元WBC世界ユース・フェザー級王者ジョナタン・ロペス(20=米国)を迎え、週2回ペースでスパーリングを続ける。
井上 これくらいレベルの高い選手だと、スパーリングの入り方まで毎回変えるので自分も毎回変える。頭を使い、どう当てはめるか。この駆け引きはネリに当てはまる。この選手に対応しておけば間違いない。
所属ジムの大橋秀行会長(59)によると、抽選販売が開始されたチケットの売れ行きは好調だという。
井上 満員にしたい。リングが少し遠くて見えなくても、雰囲気とかすごいものがあると思う。
残り1カ月間の調整は減量の苦しみ、試合への重圧があるはずだが、あえて「楽しみ」と表現した。
井上 疲れがたまると感覚が狂うもの。動きが良くないと捉えてしまうこともある。その感覚をしっかり合わせたい。そのズレをなくしていくことが必要。減量もあり、いろいろなことが入り交じる時期だから、自分もすごく楽しい。
強い信念を胸に、井上が最高潮モードに入る。【藤中栄二】

