ボクシング4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(31=大橋)が殺気立ち、大一番に備えた。6日、東京ドームでWBC世界同級1位ルイス・ネリ(29=メキシコ)との防衛戦を控え、5日に都内のホテルで前日計量に臨み、リミットよりも500グラム少ない54・8キロでパスしたネリに対し、100グラム少ない55・2キロでクリア。20秒間のフェースオフ(にらみ合い)で火花を散らした。歴史的試合の勝者に贈られるWBCダイヤモンドベルトも懸けられた一戦へ、井上が戦闘モードに入った。

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あと数センチで両者の鼻が届きそうな近距離だった。井上がネリとフェースオフを続けた。20秒間、関係者の制止があった後も鋭い視線を外さなかった。4日の会見で交わした握手はない。井上は「明日やるだけなので。ここからそういう精神的な駆け引きも始まっている」と自信の表情。世界ベルト4本を手に堂々と統一王者のオーラを放った。

18年3月の山中慎介戦の前日計量で体重超過したネリが500グラムも少ないウエートで計量クリアしたことにも平然としていた。「さすがにビッグイベント。ネリも過去最高のファイトマネーをもらうだろうし、そこに対しての心配はなかった」と平常心を貫いた。自身はリミットより100グラム少ないウエートで計量を終え「コンディションはいつもながらばっちり」とうなずいた。

この日、井上-ネリ戦で懸けられるWBCダイヤモンドベルトが初披露された。現在、歴史的な試合の勝者に敬意を表す意味を込められる記念ベルトだ。今回は腰の位置から中央部にかけて井上、ムハマド・アリ、先代のWBCスライマン会長、ネリの顔写真が装飾されている。12年10月、西岡利晃がノニト・ドネア(フィリピン)と対戦した際に懸けられたが、9回TKO負け。井上が勝てば日本人初奪取となる。過去にはパッキャオ、メイウェザー、ホプキンスらも巻いた勲章だ。

計量を見守った大橋ジムの大橋秀行会長(59)は「(井上は)怖かったね。殺気が出ていたし、最高の状態」と太鼓判を押した。井上は集中力が研ぎ澄まされた獣のような戦闘モード。最後に意気込みを問われ「今聞いてどうするのですか! やるしかないですよ」と強調した。約34年ぶりに東京ドームで開催されるボクシング興行で、日本人初のメインイベンターを務める王者が張り詰めた空気を漂わせて大一番を待っている。【藤中栄二】

〇…WBCでは井上-ネリ戦が日本ボクシング史上最大の一戦になると位置付け、独自にダイヤモンドベルトを用意した。計量前に実物ベルトを公開。09年に創設され、当初は階級最高の王者と認定し、防衛戦も特別な認可があれば可能だった。ただ現在は記念ベルトとしての役割に変更されており、WBCは「トロフィーのようなベルトで勝敗で移動する王座ではない。井上-ネリ戦の勝者が獲得する特別なベルトになる」と解説していた。