ボクシング4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(32=大橋)が名古屋で「名勝負」の歴史を刻む。14日、名古屋・IGアリーナでWBA世界同級暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(30=ウズベキスタン)との防衛戦に臨む。12日に同市内で公式会見に臨み、アフマダリエフと初対面を果たした。国内マッチで首都圏以外の世界戦に臨むのは初めて。日本ボクシング界で過去、多くの名勝負が繰り広げられてきた決戦地で「キャリア最強の強敵」撃破に自信を示した。
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引き締まった表情で井上は「キャリア最大の強敵」と初めて顔を合わせた。元2団体統一王者アフマダリエフと並び立ち「すごくコンディションが良さそうなので仕上がっているなと。どんな形でもどんな内容でも勝つという気持ち」と集中した。国内マッチで自身初の首都圏以外の世界戦。自然と高揚感に包まれた。
試合1週間前から名古屋駅構内で井上-アフマダリエフ戦のPR動画が流れ、市内バス停にはPR画像が設置。既に1万7000人分のチケットは完売した。井上は「名古屋で試合できることが初めての経験ですごく楽しみ。プロモーションも力になる。この試合を期待してもらっていることが分かる」と歓迎した。
過去、名古屋では日本ボクシング界の数々の名勝負が刻まれた。ファイティング原田が「黄金のバンタム」エデル・ジョフレ(ブラジル)を下す大金星を挙げ、WBC世界バンタム級王座統一戦で、正規王者薬師寺保栄と暫定王者辰吉丈一郎が流血戦の打ち合いを繰り広げた。大橋ジムの大橋秀行会長(60)は「明後日、両者が同じリングに上がると想像するだけでドキドキワクワクする。50年先、100年先、素晴らしい試合だったと語り継がれる1戦になる」と強調した。
勝てば世界タイ記録の世界戦26連勝、4団体統一王者として5度目防衛成功は世界新記録となる。米プロモート大手トップランク社のボブ・アラブCEO(93)によると、井上は次戦で12月にサウジアラビアでWBC同級1位アラン・ピカソ(25=メキシコ)の挑戦を受ける見通しだという。アフマダリエフ撃破をステップにさらなる高みを目指す井上は「精神的にもすごく追い込んで練習してきた。対戦イメージはかなり固まっているが、ここで言えることはない。明後日、楽しみに」と自信の表情。メークドラマの準備は整ったようだ。【藤中栄二】
☆名古屋での主な名勝負☆
◆65年5月、ファイティング原田-エデル・ジョフレ戦(愛知県体育館)圧倒的不利予想の原田が50戦無敗の世界バンタム級王者ジョフレ(ブラジル)に挑戦。一進一退の攻防を繰り広げて判定勝利の大金星。
◆71年10月、ルーベン・オリバレス-金沢和良戦(愛知県体育館)金沢がWBA世界バンタム級王者オリバレス(メキシコ)に挑み激しく打ち合い、13回に王者を追い詰め連打も14回に3度ダウンしKO負け。年間最高試合に選出された。
◆91年2月、畑中清詞-ベドロ・デシマ戦(名古屋市国際展示場)畑中がWBC世界スーパーバンタム級王者デシマ(アルゼンチン)に挑戦。1回にダウンを許すも4回に4度ダウンを奪って8回TKO勝ち。
◆94年12月、薬師寺保栄-辰吉丈一郎戦(名古屋レインボーホール)WBC世界バンタム級王座統一戦で、正規王者薬師寺が同級暫定王者辰吉と激突。両者ともに流血の死闘で手数で上回った薬師寺が統一成功。
〇…WBO世界バンタム級王者武居が最強挑戦者撃破に燃えた。同級1位メディナ(メキシコ)と初対面し、気持ちを高ぶらせた。所属ジムの大橋会長から「この試合をクリアすれば、いろいろな景色が広がる。負けられない1戦」とハッパをかけられた武居は「この先のことはまったく考えていない。王者として格の違いをみせるだけ」と集中力を高めた。メディナは武居が対戦希望する那須川天心(帝拳)のスパーリング相手。那須川とは「盟友」関係になる。
〇…WBA世界ミニマム級正規王座決定戦は対照的な両者が激突する。国内最多となる世界王者15人(JBC公認)を輩出した帝拳ジムで最速7戦目の世界王座獲得を狙う同級2位松本は「夢がかなう日が近づいているのでワクワクしている。(本田明彦)会長の期待に応えたい」。一方、同級1位高田は8敗し28戦目で世界初挑戦。創設40年目の所属ジム初の世界ベルトを届ける意気込みで「格好つけずジム初の世界王者になる。何が何でも取りにいく」と貪欲な姿勢だった。

