<プロボクシング:ノンタイトル10回戦>◇8日◇バンコク

 【バンコク=大池和幸】元WBC世界バンタム級王者の辰吉丈一郎(38)がタイでの復帰2戦目で無残に敗れた。格下の同国スーパーバンタム級1位サーカイ・ジョッキージム(19)に1回から防戦一方。3回に左フックをまともに食らってダウンすると、7回にはセコンドからタオルが投入されて1分3秒TKO負けした。「もう1回やりたい。一から出直しや」と現役続行を希望したが、引退の2文字がちらつく厳しい現実を突きつけられた。

 一方的な劣勢で迎えた7回。辰吉はサーカイの左フックによろめき、後退してロープ際に詰まった。「タオルや!」。義兄で後見人の徳丸俊逸氏がセコンドに投入を指示。フラフラの辰吉はレフェリーに抱きかかえられ、試合が終わった。

 何とか控室に戻ると、辰吉が重い口を開いた。「何回負けとるんや…。なにせ体が重かった。悔しいなぁ。パンチは見えなかった。相手が強かった。自分が弱かったから負けただけ」。いつもの威勢のよさは、すっかり消えていた。

 惨敗だった。昨年10月の再起戦では流れなかったテーマ曲「死亡遊戯」に乗って入場し、日本から駆けつけた300人の応援団から歓声が上がった。しかし、1回から相手のパンチを顔面に浴び、1回を終えると意識を失いかけたのか、赤コーナーの方向を間違え、セコンドに助けられた。3回には左フックを浴びて約10年ぶりのダウンで勝負の行方は決定的となった。

 世界王者時代の99年8月のウィラポン戦以来、3749日ぶりの黒星。昨年10月に来日し、無名の牧野サトシ(琉球)に10回KO負けしているサーカイに完敗した。それでも辰吉は「もう1回やりたいなぁ…。一からやり直しや」と、再起を明言したが、徳丸氏は「日本に帰って家族と相談して決める」と、今後については慎重だった。2カ月後には39歳になる。衰えは隠せず、タイの2戦目で待っていたのは厳しい現実だった。