日本プロボクシング協会は19日、東京・後楽園ホールで「ボクシングの日」ファン感謝イベントを開催し、ちょうど60年前の1952年5月19日に日本人初の世界王者となった元世界フライ級王者の故白井義男氏(享年80)と、その対戦相手だった故ダド・マリノ氏(米国)のセコンドを務めたスタンレー伊藤氏(88)に特別賞を授与した。今年3月に佐藤洋太(28)がWBC世界スーパーフライ級王座を獲得して日本ジム所属の世界王者は70人。会場には伊藤氏、白井氏の登志子夫人(80)をはじめ、歴代世界王者が集結し、白井氏らの功績をたたえた。

 ボクシングの聖地「後楽園ホール」に歓声がわき上がった。現役を含めて日本ジム所属の男女の歴代世界王者34人が集結。ファイティング原田氏、輪島功一氏、具志堅用高氏、浜田剛史氏、畑山隆則氏…。それぞれの時代に活躍した王者たちが一堂にリング上にそろった。

 60年前のこの日、4万人の大観衆がつめかけた後楽園球場で白井氏が日本人初の世界王者になった。そこから日本ボクシングの歴史が始まった。以来、日本ジム所属の世界王者は70人。故白井氏の代理として特別賞を授与した登志子夫人は「白井が道しるべになったのならうれしい。主人は今も天国でボクシングの発展を見守っている」と、故人の思いを代弁した。

 当時、白井氏の対戦相手だった故マリノ氏のセコンドに入ったトレーナーのスタンレー伊藤氏にも特別賞が授与された。同氏は64年東京五輪では日本代表の特別コーチとして、今年1月に亡くなった桜井孝雄氏(享年70)の金メダル獲得に貢献。その後も元WBA世界ライトフライ級王者の具志堅氏のセコンドとして日本人最多13度防衛をサポートした。ハワイから駆けつけた伊藤氏は「選手もトレーナーもマネジャーもみんな一生懸命勉強して、頑張っている」と話し、現在8人の世界王者を抱える日本の躍進ぶりに目を細めた。

 今年はミニマム級でWBA王者八重樫東とWBC王者井岡一翔との日本人初の団体王座統一戦(6月20日、大阪・ボディメーカーコロシアム)が行われる。世界王者8人時代。ただ世界王者が多いだけでは盛り上がらない。同協会会長で、八重樫の師匠でもある大橋秀行氏(47)は「ファンが望むビッグマッチ、やるかやられるかの好試合を、いかにやっていくか。それが白井さんの遺志を引き継ぐことだと思う」とボクシング界のさらなる発展への使命感を口にした。【田口潤】

 ◆白井義男(しらい・よしお)1923年(大12)11月23日、東京・荒川区三河島生まれ。43年(昭18)に拳道会に入門。戦前は8戦全勝。その直後に召集され海軍に入隊。終戦翌年の46年に現役復帰。49年1月に日本フライ級王座、同12月に同バンタム級王座を獲得。52年5月19日、世界フライ級王者ダド・マリノ(米国)を判定で下して、日本人初の世界王者に。通算成績は50勝(22KO)9敗4分け9EX(エキシビション)。03年12月26日、肺炎で死去。享年80。