大相撲の尾車部屋に入門した芽室町出身の矢後太規(たかのり=22)が、夏場所(14日初日、東京・両国国技館)で待望の初土俵を踏む。幕下15枚目格付け出しでのデビューのため、全勝なら史上最速1場所での十両昇進の可能性もある。昨年52年ぶりに誕生した北海道出身のアマチュア横綱は、プロの世界でも横綱になるべく、デビュー場所から圧倒的強さを披露する。

 臨戦態勢は整った。身長185センチ以上で約170キロの体格、左手で下手をとる“左四つ”のスタイルは横綱稀勢の里(30=田子の浦)に共通する。矢後は横綱の動きを動画やニュースで繰り返し見てきた。「『北海道から強い力士が出てきた』と思われたい。稀勢の里関のようなどっしりとした相撲を取れるようになることが目標」と力強く言い放った。

 満を持してデビューを迎える。3月場所で初土俵を踏む可能性もあったが、古傷の両ひざの状態、入門直後で部屋の生活に慣れていないことを考慮し、今場所まで待った。全日本選手権優勝の実績から、スタートは幕下15枚目格付け出し。全勝優勝なら1場所で十両昇進の可能性があるための配慮でもある。「今の位置を生かして、一気に番付を駆け上がりたい」と言う。

 約3000グラムで生まれたが、1歳で10キロを超えた。父浩史さん(56)は「あっという間に背負うのが大変になった」という。芽室が日本一の収穫量を誇るスイートコーンなどをおなかいっぱい食べ、毎日3リットルの牛乳を飲み続け、小学校を卒業するころには、身長180センチ、体重120キロ超えの体格になった。「地元のおいしいものを何でも食べ、牛乳を飲んで育った。次はいい報告をする時に戻りたい」と郷土愛を口にする。

 幕別町の十勝相撲道場で小中学生時代の矢後を指導した小師国光代表は「十両昇進が決まった時には、後援会や、化粧まわしの話もすぐに出てくるはず」と待ちわびる。芽室名物の“コーンチャーハン”をPRするマスコット「コーン君」や、迫力満点のどさんこ馬などが、化粧まわしのデザイン候補になりそうだ。

 昇進が決まるまで、しこ名は“矢後”のままの可能性が高い。くせ毛のため「なかなか伸びたように見えないし(まげを)結うまで1年かかりそう」(矢後)という髪の毛も気になる。しかしイメージは史上初の1場所での関取昇進。「当たって、一気に前に出て、上手を取れたら取って、組んで、前に出る」。電光石火の相撲で、勝利と番付をつかむ。【中島洋尚】

 ◆矢後太規(やご・たかのり)1994年(平6)7月8日、芽室町生まれ。幼稚園からぜんそくの治療を兼ね水泳教室に通う。芽室西小5年の時に柔道から相撲に転向。芽室西中では全道中学3連覇、東日本選抜準優勝。埼玉栄高では3年時に高校総体団体3位、国体団体優勝に貢献。中大では1年からレギュラー入りし、4年では主将も務め全日本選手権優勝、インカレ個人8強など。家族は両親と兄、妹。186センチ、170キロ。