東前頭4枚目の松鳳山(34=二所ノ関)が、幕内36場所目で初の初日から4連勝を飾った。取組前まで4勝12敗と苦手にしていた、同3枚目の琴奨菊を上手出し投げで破った。取組後は取り口を覚えていないほど、無我夢中で白星をつかんだ。昨年10月に一時意識不明で頭部の手術を受けた、師匠の二所ノ関親方(61=元大関若嶋津)が快方に向かっていることも判明。場所後に好結果を報告するため必死の土俵を続ける。

 今年34歳となったベテラン松鳳山でも、取組中の記憶がなかった。琴奨菊が絶大な力を発揮する、左四つだけは避けようと取組前に意識したことはかすかに覚えている。その中で立ち合いで張り、右に動いてまわしを取ると横から攻めて上手出し投げ。最後は土俵際まで寄られながらも残し、幕内初の4連勝を飾った。

 「全然イメージと違う相撲を取っていた。立ち合いは、もろ手で突いたつもりがNHKのインタビューで『張った』と聞いて自分でもビックリ。何も内容を覚えていない。でも、それだけ必死になって取れているということ」。支度部屋に戻ると、まるで人ごとのように笑って話した。「考えるよりも直感で取る」と、仕切りを重ねる中で立ち合いを決めていくという。好きな言葉はブルース・リーが映画「燃えよドラゴン」で言った「考えるな、感じろ」という名セリフだ。

 合口の悪い相手を迎えても「負けている相手の方が硬くならなくていい。勝っている相手だと負けられないと思うから」と話す。

 ベテランだからこそ強いプロ意識がある。「自分はいつも同じようなコンディションで臨んでいる。でも体ひとつとっても、結果が良ければ『張りがある』と言われるし、悪ければ『張りがない』。結果論で言われる世界」と認識する。常に言い訳はしない決意だ。

 今場所の何よりの発奮材料は「師匠に良い結果を報告する」ことだ。部屋付きの湊川親方(元小結大徹)は二所ノ関親方の現状について「リハビリを頑張っています」と話すにとどめたが、関係者によると快方に向かっているという。三賞や優勝争いも可能性があるが「欲を出すとけがするから」。部屋頭が白星で師匠へのメッセージを送り続けるつもりだ。【高田文太】