8場所連続休場中の大相撲の横綱稀勢の里(32=田子ノ浦)が16日、青森・八戸市で行われた夏巡業で、前頭豊山と三番稽古を行い、計12番で11勝1敗と大きく勝ち越した。最初の一番こそ押し出されたが、その後は突き、押し、得意の左四つからの寄りなどで寄せ付けず11連勝。「いい稽古になった。とにかく前へ前へ、という意識で(取った)」と、収穫を口にした。

 7月の名古屋場所で12勝を挙げて優勝争いに加わり、敢闘賞も獲得した24歳の豊山とは本場所での対戦経験がない。稽古で胸を合わせるのも、10番取って全勝だった4月の春巡業以来2度目。豊山とは、出場すれば秋場所(9月9日初日、東京・両国国技館)の序盤戦での対戦が想定されるだけに、まわしを取ることができても、できなくても、厳しい攻めを見せるなど、熱のこもった稽古を披露した。

 白鵬、鶴竜の両横綱も、初顔合わせが想定される相手のもとには、本場所前に出稽古して感覚をつかむことが多い。左足裏にできた傷の影響もあって、夏巡業ではこれまで、関脇御嶽海と6番取った以外、秋場所での対戦の可能性が低い幕内下位と相撲を取っていた。だが成長著しい若手有望株を「当たりが強いし、力をつけているから」と認め、本場所を想定した稽古へと調整のペースを上げた。

 豊山も稀勢の里について「右上手が速い。それが生命線だと思うから、どれだけ取らせないか考えたけど、うまさと包み込むような体の大きさで、思うようにできなかった。やっぱり、まわしを取ったら強い。引きつけられたら離れられない。少しでも上体が起きるとやられてしまうので、前傾姿勢でやったつもりだったけど…」と脱帽した。三番稽古の終盤の立ち合いの際に稀勢の里の頭がぶつかり、右目上の腫らしながら悔しさをにじませていた。

 一方で、本場所での稀勢の里との初顔合わせは心待ちにしている。「稀勢の里関の取組は独特の雰囲気になる。(観衆が)『ワーッ』となった中でやりたい。その中で何かできれば、自信になる。4月の巡業で稽古をつけてもらった時は、漠然と取って負けてしまったけど、今日(16日)は違う」と、本場所は一発勝負だけに、最初の一番に勝ったことに収穫と光明を見いだしていた。