ケガから復帰し関取としては16年夏場所以来、15場所ぶりとなる本場所の土俵に上がっている東十両13枚目の豊ノ島(35=時津風)が、2ケタ勝利に王手をかけた。

既に勝ち越しを決めている豊ノ島は、3敗で十両優勝争いでトップに並ぶ西十両5枚目の照強(23=伊勢ケ浜)と対戦。前日の石浦同様、169センチ、115キロで豊ノ島が「苦手」という小兵の照強に、立ち合いから左をのぞかせると一気の出足で圧倒。押し倒しで破り9勝目(4敗)を挙げた。これで十両の優勝争いは、3敗でトップの琴勇輝(佐渡ケ嶽)と友風(尾車)を豊ノ島、照強、水戸龍の3人が1差で追う展開になった。

前日、あれほど「苦手」と話していた小兵を一夜で克服。そのことを問われると「1日で攻略です」と胸を張った。「形を意識しすぎて圧力をかけに行こうとした」という前日の反省を踏まえ、この日は「自分の形どうこうでなく一気に圧力をかけようと。それだけを考えて行った」という無欲さが功を奏した。さらに勝ち越しを決めた2日前に「十両優勝を狙う」と腹蔵なく口にしていたことも反省。「優勝どうこうは意識から外した。1日1番、いい相撲を取っていけば後からボーナスとして優勝はついてくる」という考えにあらためた。

関取復帰をあらためて実感させられたことが前日、あった。沙帆夫人との電話での会話の中で伝えられた「給料が入ってました。ありがとう」の言葉。16年10月を最後に、月給などとは無縁の幕下生活が2年間も続いていた。力士として関取に復帰したことは、待遇面など番付発表後から実感できたが、あらためて「男として1つ仕事が出来た」と身に染みる言葉も発奮材料となった。残り2日。悔いなく、今場所も相撲を取りきる。