16場所ぶりに幕内へ戻った、西前頭14枚目の豊ノ島(35=時津風)が、今場所初黒星を喫した。1022日ぶりの幕内での土俵となった初日は、新入幕の照強(伊勢ケ浜)を下し白星発進したが、この日は同15枚目で初顔合わせとなった琴恵光(27=佐渡ケ嶽)に、土俵際で逆転の突き落としを食い、星は1勝1敗となった。

立ち合いは「しっかり踏み込んだ」と迷いはなかったが、その後の攻め口に悔いを残した。右はスパッと入ったが、左は入らないまま相手得意の右四つ。その左は脇が空いたまま不自由な体勢だったが、それでも自分より30キロ以上軽い相手だから、前に出られた。そこが落とし穴。初顔の相手ながら土俵際で逆転の「突き落としや網打ちがあるのは分かっている中で、見事に(突き落としを)食ってしまった。攻め方に焦りがあったということでしょう。(左は)上手でも取ってガチッと組み止められていれば問題なかった。まあ紙一重だったけど」と敗因を振り返った。

相撲の奥深さを感じさせられた一番でもあった。元々は「受け」て十分な体勢になって出るのが豊ノ島の相撲。それがケガで幕下に落ち「引退を覚悟した時、どうせなら最後ぐらい前に出る相撲で悔いなく終わろう」と攻めの形が変わった。その変化が功を奏し「奇跡的に戻った」と幕内復帰。本来は自分の相撲ではないが「通用しなかったら、また変えようと思ったけど意外と、それがはまってしまって続けている。今までにない感覚で押せているのが相撲を楽しくさせている」。

この日は、それが結果的に“裏目”になった。「押せちゃう、行ける。その自分の感覚が、逆に軽量の力士は、それを利用して取っている。前に出るにしても、出所をつかめてないのかな?」。そう言いつつ「悪い意味では迷走だけど、いい意味ではチャレンジャー。自分は35歳で相撲を変えたチャレンジャー。6歳から始めた相撲を極めることはできないけど、相撲の幅が広がるかもしれない」とプラス思考に転じる。年齢を感じさせない若さは、体力的にも、そんなプラス思考からも感じ取れた。