ケガや内臓疾患のため、4場所連続全休し大関から西序二段48枚目まで番付を落とした照ノ富士(27=伊勢ケ浜)が、無傷の4連勝で勝ち越しを決めた。

この日も約180キロと腰の重い、同40枚目の寺尾翔(29=錣山)と対戦。これまでの3番とは、ややてこずりながらもろ差しで食い止め、寄り切れないところで一呼吸。右のかいなを返しながら、豪快なすくい投げで勝負を決めた。

勝ち越しを決めながら、首をひねりながら東の二字口に戻った。「自分から足を止めてしまった。何でなんだろう…」。寄り切れなかったことが、その言葉に表れたのか、まだ万全とはほど遠いことをうかがわせた。「ぶつかり稽古もやってないからね」。稽古場では、若い衆相手に胸を出すことは出来ても、相手にぶつかることは出来ない。そのあたりの感覚が、まだつかめていないのだろう。

それもそのはず。筋トレさえ場所前に、1年半ぶりに再開したほど。勝ち越しとなると大関だった、2年前の夏場所以来のこと。「そこは全く気にしていない」と、今は不安払拭(ふっしょく)のことしか頭にないようだが、それでも部屋の呼び出しが駆けつけると、笑みを浮かべながら「おかげさまで給金を直す(=勝ち越す)ことが出来ました」と頭を下げていた。

もちろん付け人はいないが、部屋の若い衆が気を使い、場所では何かと面倒をみてくれる。自分の取組2番前に相撲を取った序二段力士に「風呂に入りなよ」と勧めると「いや(照ノ富士を)見送ってから入ります」。部屋では自分の取組をBS放送などで見てくれるという。「みんな気を使ってくれる。ありがたいことですよ。(歓声も)ますます頑張らないといけない、という気持ちになる」と感謝の念でいっぱいだ。

そんな周囲に支えられながら、復活場所の土俵は残り3番。全勝すれば、来場所は三段目に上がる。1歩1歩、復活の階段を上る。