大関とりの関脇貴景勝(22=千賀ノ浦)が、再び連勝の波に乗った。

埼玉栄高の3学年先輩で、普段から仲のいい平幕大栄翔を突き出し。すでに2敗を喫し、昇進へ暗雲が垂れ込めていたが、会心の押し相撲を見せた。全勝は横綱白鵬と逸ノ城。横綱鶴竜、大関高安、豪栄道らが1敗を守った。

大関とりへ、文字通り1歩も引かない。突っ張り合いは互角も、貴景勝の腰が低かった。同じ押し相撲の大栄翔を下から起こし、最後まで下がらずに突き出し。2日目以来の連勝も「普通っす。気持ちで負けないようにするだけ」と、ぶぜんとしていた。

大の仲良しでも、土俵の上では勝負師の顔を見せた。大栄翔は3学年上だが、巡業では同じタオルにくるまって寝ころぶほどで、はたから見れば恋人だ。大栄翔が先場所Vの玉鷲に土をつけた2日目の11日。直前の取組で勝利した貴景勝は「効いたな~俺の力水」といじり倒した。ただ、勝負となれば話は別。支度部屋では「誰が相手でも関係ない」と、目を光らせた。

今場所、妙義龍と北勝富士に続く3人目となる“OB狩り”だ。貴景勝含め、今場所は前頭2枚目以上に埼玉栄高OBが5人。数いる教え子の中でも、相撲部の山田道紀監督は「人が見えないところで努力するタイプ」と振り返る。高校時代、稽古後のランニングでは同期よりも1時間早く走り始めて差をつけた。入学時は120キロ程度だったベンチプレスも、200キロ以上を記録して同校歴代1位。高い身体能力も持ち合わせ、当時140キロ以上の体重ながら体育の授業でハンドスプリング(転回)を決め、同級生を驚かせた。

平成に大関昇進した25人で、7日目までに3敗した力士は0。昇進目安の10勝以上へ、取りこぼせない一番を制し2敗を死守したが「星で勘定しないようにやっていく」と、22歳は足元を見つめていた。【佐藤礼征】