大関とりの関脇朝乃山(26=高砂)が、横綱鶴竜に下手投げで負けて今場所4敗目を喫した。これで大関昇進目安の「三役で3場所33勝」には届かないが、境川審判部長代理(元小結両国)は、これまでの相撲内容を評価。千秋楽で1人大関の貴景勝を破れば、昇進の機運が高まる可能性はある。2敗を守った白鵬と鶴竜の両横綱が、千秋楽の結びの一番で優勝をかけた相星決戦に臨む。

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痛恨の横綱戦2連敗。そして目標としていた12勝に届かず。全てを受け止めた朝乃山は前日同様に、支度部屋外のミックスゾーンに自ら歩み寄った。「出直しです。出直しです」。吹っ切れたかのように、笑みをこぼしながら言い放った。

紙一重の一番だった。立ち合いで右を差し、自分の形を作った。土俵際に押し込んだが鶴竜に体を入れ替えられ、再び土俵際に押し込むも、また体を入れ替えられた。最後は投げの打ち合いとなり、同時に土俵下に落ちて軍配は朝乃山。しかし物言いが付き、協議の結果、朝乃山の左肘が先に着いたとして、軍配差し違えとなった。「悔いはない。勝ち負けがはっきりしているスポーツ。物言いが付いて、協議した結果なので受け止める」と潔かった。

自ら出直し宣言をしたが、大関昇進が消えた訳ではない。幕内後半戦の審判長を務めた境川審判部長代理(元小結両国)は「力は十分についていると思う。内容は初日から充実している。誰に対しても真っ向勝負するのが魅力。好感が持てる」と評価した。横綱戦2連敗が痛手となったのは確か。ただ、千秋楽での貴景勝戦の結果によっては「そこでどういう見解になるのか。話し合いになるのか。数字を見るのか」と含みを持たせた。

過去にも豪栄道や稀勢の里ら32勝以下で大関に昇進したケースはある。さらに今場所は82年初場所以来38年ぶりの1人大関だけに、目安に届かなくとも昇進する可能性はある。「思い切りいくだけです」と吹っ切れた朝乃山が、勝ち越しをかけた貴景勝との運命の一番に挑む。【佐々木隆史】