新型コロナウイルス感染症の終息が見えないまま、大相撲7月場所が初日を迎えた。コロナの影響で28歳で死去した勝武士さん(本名・末武清孝)が所属した高田川部屋の関取3人はそろって白星スタート。部屋頭の東前頭4枚目輝(26)は「できることはしっかり相撲をとること」と決意を示した。

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雑念を振り払うように土俵に集中した。輝は碧山を押し出し、初日を白星で飾った。「自分らしい相撲がとれた。圧力をかけて前に出ることだけ考えた」。無心で巨漢に立ち向かった。

いまだ終息がみえない新型コロナウイルスの直撃を食らった部屋だ。5月に部屋の勝武士さんが新型コロナウイルス性肺炎による多臓器不全で亡くなった。大きな傷を負った。師匠の高田川親方(元関脇安芸乃島)も約1カ月後に「だれからも愛される大事な家族を失った悲しみは言葉にできません」とコメント。無念の思いを背負った。

輝は言葉少なく、「変わらず自分の相撲をとるだけです。(自分が)できることはしっかり相撲をとるだけ」。その思いは白星でつながった。西前頭6枚目の竜電、西十両6枚目の白鷹山と部屋の関取3人衆はいずれも白星発進した。

竜電は「一番に懸ける思いは強いと思います。(勝武士さんへの思いは)もちろんそれはあります」。白鷹山も「(勝武士さんと)これからも一緒にやっていきたいと思います。いい相撲を取って喜んでもらえるように頑張りたいです」。それぞれの思いを結果で示した。

感染防止を徹底してきた。稽古に関しても竜電が「やはり密にならないように1人でできることを重点的にやった」と語ったように自ら“規制線”を設けた。いつも通りの調整とはいかなかったはず。それでも思いを強く、土俵に上がった。気持ちの勝利だった。

終わりが見えないコロナ禍の中、まずは無事に初日を終えた。竜電は「いい相撲を取ろうと思って気合を入れてやりました。お客さんも入ってもらって、雰囲気のいいところで相撲を取れたので、すごく気持ちいいですね。また明日から、しっかり頑張っていきたいです」。天国に旅立った勝武士さんへ、土俵の充実が供養となる。【実藤健一】