“旧大関”の東前頭17枚目照ノ富士は、幕内で優勝経験を持つ実力者・玉鷲の突っ張りに慌てなかった。距離を取って張り返し、いなしで崩して最後は左をねじ込んで寄り切り。「興奮してたから冷静にいこうと思った。落ち着いて見て、前に出ようと思った」。過去5勝5敗の難敵を破った。

両膝に痛々しいテーピングを施すが、まともに引くような相撲内容は今場所ほとんど見受けられない。13日目はいよいよ、朝乃山との対戦が組まれた。取組後のリモート取材で割を見たかと問われ「はい」と一言。「冷静に自分のやるべきことをやるだけ。明日の一番に集中するだけ」と、集中力を高めた。

序二段で土俵に戻ってきたのが昨年春場所。復帰8場所目で大関と対戦することは「想像通りです」。引退を慰留してくれた師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)を信じ、また幕内で相撲を取る自身の姿を疑わなかった。大関経験者が関脇以下で優勝すれば1976年秋場所の魁傑以来で、昭和以降2人目になる。史上初めて序二段から幕内復帰を果たした不屈の28歳が“史上最大のカムバック”を果たす時がきた。【佐藤礼征】

▽八角理事長(元横綱北勝海) (優勝争いは)白鵬の足がどうなるか分からないが、朝乃山-照ノ富士の一番が大事になってくる。精神的にどちらも負けていないから面白くなる。上手を浅く取った方が有利ではないか。がっぷりになると照ノ富士の膝も心配だ。