高安が守り続けた優勝争い首位から陥落した。動き回る翔猿を捕まえて左四つになって右上手を取ったが、勝負を決められない。じりじりと土俵際に寄ったが、必死の首ひねりに屈した。同時に土俵下に落ち、軍配は翔猿。物言いがついたが、協議の結果、軍配通りとなった。

   ◇   ◇   ◇

ここまで場所を引っ張ってきたのは誰もが認めるところだ。だから星で並ばれても「残りは自分らしい相撲を取ろう」と開き直ればいいものを、高安らしさが影を潜めてしまった。前日の若隆景、この日の翔猿と同じような小さい相手だから取りづらいのは分かるが、小兵の力士は怖がらずに前に圧力をかけられるのが一番、嫌なんだ。なのに警戒しすぎて前に出ないから翔猿も、しめたと仕掛けられる。左四つに組み止めても攻められないのは、プレッシャーだろう。動かないと言うより動けない。開き直れないままこの日を迎えてしまったようだ。一方の照ノ富士は朝乃山が一応、考えた立ち合いでもろ手で突かれたが、4連勝中ということもあり左上手さえ取れればという精神的な余裕があるから対処できた。千秋楽で対戦する貴景勝はここにきて、いい相撲を取れている。照ノ富士も押されるのは嫌だろう。大関復帰に優勝で花を添えられるか、4敗で優勝決定ともえ戦か、面白い一番になる。(日刊スポーツ評論家)