小結高安(31=田子ノ浦)が、一家の大黒柱としての自覚を示した。東前頭2枚目明生を押し倒しで下して3連勝。18年九州場所以来の初日から3連勝と好発進した。3月の春場所後には、2月に北海道に里帰り出産した演歌歌手の杜このみ夫人と第1子となる長女と対面。新生活が始まり、大関復帰への気持ちが高まった。4大関陣は貴景勝、正代、照ノ富士が白星を挙げ、朝乃山は連敗した。

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土俵上には力士としても、人間としても強くなった高安がいた。先場所敗れた明生に、立ち合いで中に入られた。ヒヤリとしたが、力強く踏み込んで構わず前へ。圧力勝ちして明生を引かせて、冷静に見て押し倒した。「厳しい相撲で隙がないように。イメージ通り」と納得の一番だった。

無観客開催でも家族の存在が背中を押してくれている。2月に里帰り出産したこのみ夫人と長女との新生活が、春場所後から始まった。テレビ電話でしか顔を合わせることができなかった愛娘を、ようやく抱くことができ「出産に立ち会えなかったので感動した」としみじみ。そして「もう1回、番付を上げたい覚悟ができた」と、あらためて大関復帰への思いが高まった。本場所中も「出来ることは妻と相談して手伝っている」と家事をこなす。父親としての自覚が土俵上での奮起につながっている。

先場所は優勝争いを演じるも、終盤戦で失速して賜杯には届かなかった。それでも「いい経験になったのでつなげていく」と前向きだ。場所前は、関取衆が集まる合同稽古には参加せず、部屋付き親方の荒磯親方(元横綱稀勢の里)との三番稽古で汗を流した。「充実した稽古でした」と力を蓄え、先場所の苦い経験を糧に結果を出している。

4日目から有観客開催となる夏場所。2大関撃破と勢いに乗る若隆景との一番が組まれた。「一番一番に集中するだけ」。期待の若手を下し、強くなったパパが初の賜杯に向けて歩みを進める。【佐々木隆史】