不戦の取組が続く土俵を見ていて心が痛みました。父(元大関貴ノ花)が現役時代から50年近く相撲を見ていますが、こんなの初めてです。500人以上もいる格闘技団体なんて世界を見ても大相撲しかなく、それは日本の誇りでもあるけど、こんな事態になると協会関係者の心労は、いかばかりかと案じるばかりです。感染対策は万全を期していて誰かを責めることはできません。怒りやモヤモヤのぶつけ所もないまま15日間の興行をやり遂げようと、みんな必死です。いくら重症化しにくいといわれても、肥満が多く基礎疾患を持つ力士や、現役時代に体を酷使している親方衆が心配です。残り2日の興行が無事に終わること以上に、大事に至らないことを祈るばかりです。

あまり土俵に集中できない状況ではありますが、優勝争いは最後まで何とか盛り上がってほしいです。14日目の取組では、2敗の照ノ富士に挑む正代が奇跡を起こすことに期待します。一発当たって休まず二の矢の攻め。外から回り込むなり速い攻めで横綱を動かせば面白くなります。逸ノ城は不戦勝のこの日、聞くところによると支度部屋では体を動かさなかったようです。休養と割り切ったのかもしれませんが、四股を踏むなり汗はかいた方が良かったかなと思います。貴景勝には1差のまま千秋楽で予想される照ノ富士戦に臨むことが必須です。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)