大関昇進が懸かる琴ノ若(26=佐渡ケ嶽)が、大栄翔との関脇対決を制し、優勝争いの先頭を守った。

埼玉栄高の先輩でもある大関候補のライバルを寄り切った。前日8日目は通算2度目の不戦勝。それでも取組がある日と同じ準備をして、流れを変えずに勝ち越しを決めた。10日目は新入幕大の里との1敗対決が組まれた。阿武咲を含む3人が先頭で並ぶ。

中1日の取組でも、相撲勘は失わず、体の反応はさえ渡っていた。琴ノ若は立ち合いから、大栄翔の突きを浴び続けた。だが、ことごとく下からあてがい、威力を軽減。1度は引く場面があったが、喜んで出てきた相手に返す刀で右を差して勝負あり。体を密着させ、一気に前に出て寄り切った。「下がる場面があったけど考え直して我慢して、攻めに変えられたのがよかった。体がしっかりと動いて、反応良く相撲を取れた」。瞬時の好判断と動きで、途中休場場所を除けば12場所連続の勝ち越しだ。

場所前の稽古総見を含めて4日連続で胸を合わせるなど、互いに手の内を知り尽くす相手だ。だからこそ「簡単には差せないと思った」。相手が突いて腕が伸びきったところを差したのは、多くの手合わせ、豊富な稽古量のたまものだ。

前日8日目は対戦予定の小結高安が休場。自身にとっては東前頭8枚目だった21年春場所14日目の豊山戦以来、2度目の不戦勝だった。「気持ちをもう1度、引き上げるのは大変」。たった1日、されど1日。前回は取組がないことでリズムが乱れ、翌日の千秋楽で敗れた苦い思いもある。

その反省を生かし、今回は気持ちを切らさなかった。前日の支度部屋では、わずかにウオーミングアップの強度を下げただけ。取組がないにもかかわらず大粒の汗を流した。他の関取衆からは「気持ち悪いよ」の声も。変わり者のように扱われたが意に介さなかった。取組がなかったぶん疲労は取れ、軽快な動きにつながる好循環を生んだ。

10日目は優勝争いと大関とりを占う大の里との1敗対決が組まれた。ただ「やることは変わらない」ときっぱり。トップを守って、横綱、大関戦を残す終盤戦に向かうつもりだ。【高田文太】

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