全国各地の匠(たくみ)たちが、相撲界を支えている。日常生活で見慣れない数々のアイテムは、土俵に上がる力士たちにとって必要不可欠なものばかりだ。春場所(10日初日、エディオンアリーナ大阪)を前に、4回にわたって職人たちの思いを伝える。初回はキングサイズ(胴囲100センチ以上)の専門店、ライオン堂(東京・両国)が手がけるステテコなど力士用の肌着。

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180センチ、125キロと一般では大柄な記者も、ここでは当然「小兵」だった。4Lサイズの力士用の肌着を試しに購入すると、ライオン堂4代目店主の久保田純平さんから「小兵サイズですね」とほほ笑みながら言われた。“お得意さん”たちが買い求めたサイズが一目で分かるノートをめくりながら「3Lだったら炎鵬さん、4Lだったら翠富士関。宇良関は最初は4Lでしたけど、今では6Lと大きくなってますね」とスラスラと列挙した。

「洋品屋さんの王様を目指す」と1907年(明40)に開業。創業時、現在の東京都墨田区の亀沢から程なくして両国へと移ったことを境に、特大サイズへと方向転換した。力士たちの着用する肌着を販売するようになり、現在は着物の下に着るパンツ、ステテコ、シャツを取りそろえる。綿100%の生地は丈夫さが売りで、パンツにはしり当てを縫い付ける。シャツのわきの下部分をあけ、通気性をよくする工夫も施されている。

取り扱うサイズは幅広く、大型化とともに改良してきた。最大の転機となったのが、元大関でタレントのKONISHIKI(小錦)だ。現役時代の最高体重は285キロ。規格外の巨体を武器に外国出身初の大関昇進を果たした男の出現に「既製の物では間に合わない」と苦慮。試行錯誤を重ねながら、大きいながらも丈夫さを保った10Lサイズの誕生につながった。その功績は大きく「(引退した)大露羅さん(292キロ)や出羽ノ城さん(252キロ)にも同じサイズを提供することができました」と胸を張った。これからも「時代の変化に合わせて対応する」ことに終わりはない。力士たちが快適に過ごせるように、国技を支えていく。【平山連】

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