東前頭筆頭の伯桜鵬(22=伊勢ケ浜)が、横綱大の里(25=二所ノ関)を破り、2場所連続で金星を挙げた。土俵際で逆転の突き落とし。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱照ノ富士)と作り上げてきた攻めて止まらない相撲が、結果となって表れてきた。
いつもなら取り口を冷静に振り返る伯桜鵬が、夢中になっていた。「どういう相撲を取ったか分からない。横綱の圧力を残して、右を絶対に差させない。じぶっは引かずに攻め続けるというテーマがしっかりできた。横綱はあの体で瞬発力と馬力がすごいんで、自分が止まったらだめ。そういう思いで、横綱より速く動くと決めていました」。
横綱に右を差させない。自分は止まらない。やるべきことを整理し、仕切りの時は冷静だった。大の里が自分より、右にずれて仕切っていた。もろ手か、右差し狙いか、少し迷ったが、右差しを許さないことだけは忘れなかった。「正面衝突したら勝てない」と考えていた伯桜鵬にとって、相手がずれてくれることはむしろ好都合だった。
先に動いて、動く。右差しは許さない。回り込まれて一気に寄られかけたが、あきらめない。右で突き落とした。7月の名古屋場所での初金星に続き、またも大の里に土をつけた。33本の懸賞の束を両手で受け取った。「付け人にちょっとあげようかな…、やっぱうそっす」。支度部屋で懸賞の本数を聞いた時だけ、表情がほころんだ。
昨年4月、宮城野部屋の不祥事により伊勢ケ浜部屋に転籍。今年6月から新師匠となった伊勢ケ浜親方の影響を強く受けてきた。
「腹を決めて、前に出続けるという師匠からの言葉、今日はその勝負に勝てたと思う」。「周りの目とか目の前の結果にこだわることをせず、2、3年目を見据えて、ありがたい言葉をかけてくれた。自分が言葉にしたことを行動に移すことができている。部屋が変わった時から、今の相撲では勝てないと言われ、守りの相撲から攻めの相撲に変わったのは師匠のおかげ」。支度部屋で話す言葉の端々に、師匠への思いがにじみ出た。
取り口だけでなく、本場所への向き合い方も師匠譲りだ。
「1日を区切って、それを15日間続ける。勝っても負けても同じように明日はくる。一喜一憂できない」と話す。これもまた、師匠からの教え。「お客さんに変なところを見せたくない。かっこいいところを見せたい。『そんなことはどうでもいい。周りの目や結果を気にするな』と、やり続けてきた師匠が言ってくれた。それが自分の気持ちを楽にしてくれました」。
今場所は自己最高位の東前頭2枚目。「三役を達成するためにも、結果はいいから前に出ることをやり続けられたら。まず、自分がやり続けることが大事です」。俗っぽさが消え、心技体が整いつつある。【佐々木一郎】

