“史上最強の新弟子”のしこ名が、第63代横綱から受け継ぐ形で「旭富士」となることが決まった。11日の大相撲九州場所3日目から始まる前相撲で、モンゴル出身のバトツェツェゲ・オチルサイハン(23=伊勢ケ浜)が、極めて異例となる横綱のしこ名で初土俵を踏む。10日、会場の福岡国際センターで師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱照ノ富士)が明かした。関係者の間では「すでに実力は大関、横綱クラス」との呼び声が高い、大器への期待の大きさを物語るしこ名となった。

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“史上最強の新弟子”がデビュー前から伝説をつくった。しこ名はなんと「旭富士」。アマチュア実績が皆無に等しいオチルサイハンが、江戸時代から75人しかいない横綱のしこ名を名乗ることになった。異例中の異例で、後に兄弟横綱となる若乃花、貴乃花は横綱の叔父と、大関の父の名を継いだもの。そんな身内でも初土俵は若花田、貴花田と、横綱、大関のしこ名をいきなり継ぐことは許されなかった。それが優勝4度を誇る、先代師匠で元横綱旭富士の宮城野親方たっての希望で継承が決まった。

伊勢ケ浜親方が経緯を明かした。「先代(宮城野親方)から『どう?』と聞かれて『親方がいいなら、いいんじゃないですか』と答えて決まった。本人が(神奈川)旭丘高校の出身なので、その意味も含まれている」と説明した。今夏には「旭富士」襲名が内定していたという。前相撲を翌日に控えたこの日、ずっと温めていた計画を明かした。

大器だからこそ、師匠の目は厳しく「力が強いぐらい」と、技術的には未完成と強調した。ただ、筋力トレーニングは「やるなと言っても、やってしまうぐらい」と、熱心に取り組む姿勢を評価した。部屋には全45部屋で最多、6人もの関取衆が在籍。すでに関取衆の申し合い稽古に参加し、前頭伯桜鵬らに交じっても実力は頭一つ抜けている。

オチルサイハンは15歳の18年春に来日し、旭丘高に1年から留学した。高校で目立った成績はないが、卒業後から伊勢ケ浜部屋で4年半、みっちりと稽古を積んだ。規定で外国出身力士は1部屋1人まで。今年1月の初場所でモンゴル出身の現師匠が引退後、外国出身力士に必要な半年間の研修が始まった。秋場所前に新弟子検査受検、興行ビザの取得に1場所を要し、ようやく初土俵を踏む。

◆前相撲とは 新弟子検査に合格した力士や、けがなどで番付外に降下した力士が取る相撲のこと。通常は本場所の3日目から行われる。先に3勝した力士から抜けていき、抜けた順に翌場所の番付の序列が上位となる。本場所8日目には前相撲を取った新弟子の新序出世披露が行われる。師匠や部屋の兄弟子の関取らの化粧まわしを締めて土俵に上がり、観客の前でお披露目されることになる。

先月末の稽古で右目上を切り、6針縫うアクシデントに見舞われたが「気持ちが高ぶることも、緊張することもない」と話し、大物感を漂わせた。初土俵を前に注目度が一段と高まった「旭富士」が、いよいよデビューする。【高田文太】

◆バトツェツェゲ・オチルサイハン 2002年(平14)5月17日、モンゴル・ウランバートル生まれ。モンゴルでのスポーツ歴はバスケットボール、ボクシング。18年春に来日、神奈川・旭丘高に留学、相撲部に入部。卒業後の21年春に伊勢ケ浜部屋入門。今年秋場所の新弟子検査に合格。家族は母。叔母はレスリング女子76キロ級で12年ロンドン、16年リオデジャネイロ、21年東京と五輪3大会出場のブルマー・オチルバト。185センチ、150キロ。