マスコミは、森喜朗東京オリパラ組織委員会会長のクビをはねるのに必死だった。ま、擁護のしようもない失言だっただけに、だれも体を張って森会長を助けようとはしなかった。愛弟子の橋本聖子五輪相ですら「不適切な発言」といい、救命ブイを投げなかった。

辞任に時間がかかったのは、裏で説得する人が多くいたため、森さん自身が動けなかったからであろう。森さんは、本当は優しくて面倒見のいい人である。女性を差別したり、侮辱したりする人ではないが、サービス精神が旺盛で、受けをとるために口をすべらせる。

マスコミは森さんのスピーチで口をすべらせるのを待っている。もう何度も森さんは失敗してきたが、そのクセはいまだに改まっていなかった。ま、懲りない人である。茶飲み話を大きな席でやらかしたのだから、国際的イベントの最高責任者としてはまずかった。

私は、なぐさめるべく電話しようか迷った。でも、するのをやめた。森さんが命を削るようにして、東京オリパラの仕事をしていただけに気の毒で、どんな言葉で話せばいいのか妙案が湧いてこなかった。森さんは、日体大の名誉博士であられ、入学式や卒業式に幾度も出席していただき、祝辞をいただいてきた。

森さんは、サッカー協会相談役で同じ早大OBの川淵三郎氏を家に招いて善後策を練った。その結果を川淵さんはペラペラとマスコミに話した。完全にアウトだった。川淵さんも人のいい人だ。やはり日体大の名誉博士であられる。文句なしの業績を誇り、日本スポーツ界の重鎮であられ、人物識見に問題はナシ。ただ、森さん同様、サービス精神過多、最初から終わりまで独白する好人物。

かくして、森喜朗辞任劇は幕を閉じた。森さんに近い1人の人間として、残念でならないが大きな教訓を得た。「口は災いのもと」、やはり雄弁は銀でしかないということだ。後任の橋本聖子会長に期待し、立派な東京オリパラにしていただきたい。私どもは協力する。