私が膵臓(すいぞう)がんを公表した時、旧知の東大医学部放射線科の中川恵一教授が、ある夕刊紙で膵臓がんの解説をされ、私の病気を心配してくださった。膵臓がんの場合、手術後も平均で5年くらいしか生きられないという話。私の余命は、あと3年、しっかり生きたいと思う。だが、私は元気そのものである。

その中川教授が東大名誉教授の養老孟司氏と書いた「養老先生、病院へ行く」(エクスナレッジ)が、ベストセラーとなっている。「病院嫌い」で有名な養老名誉教授が、中川教授の勧めで入院し、心筋梗塞を克服したという。2人は子弟の関係にあり、入院中に医療について、老化や死などについて語り合った話を本にしたという。解剖学者として著名な養老氏が、「病院嫌い」とは意外だった。

実は、私も「病院嫌い」だった。しかし、大学の定期検診で糖尿病と判定され、やむなく通院。すると、糖尿病にくわえて前立腺肥大、「ほっ!」としていると前立腺がんを宣告された。と同時に悪性リンパ腫も発見されて青ざめる。これは血液がん、入院して抗がん剤治療を1期、2期、3期と受け、最後に15回の放射線治療を受けて完治した。中川教授は、「がんの場合、糖尿病や心筋梗塞以上に早期発見が大切です」という。

早期発見で幸運だった。「病院嫌い」の私が、糖尿病のおかげで次々とがんが発見された。膵臓がんは、悪性リンパ腫治療の入院中に発見されたのだからラッキー。ステージは2だった。毎月のように病院へ行く。昨年は大腸がんを見つけていただき、内視鏡手術で切除していただいた。4カ所目のがんだった。

コロナ禍の影響で、がん検診を受ける人が3割も減少していると中川教授がなげく。おかげで、昨年の医療費も過去最大の減少だったという。どんなに「病院嫌い」であったとしても、定期的に検診を受けるべきである。近代医学に疑念をもち、民間療法に走る人も多い。それががんである。