スポーツマンシップ。

定番の選手宣誓で「スポーツマンシップに則って…」というセリフがあるように、多くの人が耳にしたことのある言葉でしょう。しかし、一体どんな意味か説明できますか? ジュニア世代の選手たちに…いや、スポーツをしていない小中学生や保護者も含めて、大切にしてほしい心です。

かくいう私もスポーツマンシップを学んだのは最近のことです。2018年(平30)、縁あって日本スポーツマンシップ協会のセミナーに参加し、初めて学びました。その後、同協会の講習を受けて認定コーチの資格を取得し、さまざまな形でスポーツに関わる人々と交流を図って勉強しています。

といっても、スポーツマンシップは決して難しいことではありません。むしろ楽しいこと…そう、「スポーツを楽しむための心」なのです。

キーワードは「尊重」「敬う(うやまう)」。私はそう考えています。

 

・対戦相手や仲間を敬う

・ルールを敬う

・審判を敬う

 

チームメートや対戦相手がいるから、スポーツやゲームを楽しめます。だからチームメートや対戦相手を大切にする、尊重するのです。

みんなでルールを守るからゲームが楽しくなります。だからルールを尊重するのです。

審判が公平にジャッジしてくれるから、ゲームが楽しくなります。だから審判を尊重するのです。

わざわざ説明しなくても、多くの選手は理解していると思います。私は少年野球チームのコーチをしていた時期があります。選手たちが「目標は次の大会で優勝すること」と言ったので、次のように聞いてみました。

「じゃあ、優勝するために、こっそり中学生をチームに入れるのはどうだろう?」

「えー! そんなのダメだよ」

「じゃあ、バットを改造して飛ぶようにしておこうか?」

「ズルだよ」

「審判の人に何かプレゼントを渡して、うちのチームに有利な判定をするようにお願いしようか?」

「ダメダメ!」

「何で? みんな勝ちたいんでしょう?」

「そんなので勝っても、うれしくない」

「勝ちたいけど、勝ってもうれしくない?」

「そうだよ。ズルしたら、おもしろくなくなっちゃうよ」

「そうか、ズルして勝ってもおもしろくないか。そうだね。正々堂々と勝負するから楽しい。そう思っているならば、君たちは、スポーツマンシップを持つ立派なスポーツマンだよ」

このあと、私はスピードスケートの小平奈緒選手の話をしました。日本スポーツマンシップ協会の代表理事を務める中村聡宏氏の著書「スポーツマンシップバイブル」(東洋館出版社)にも書かれている、平昌オリンピックで金メダルを取った時のエピソードです。

小平選手は2018年2月18日、女子500メートルの14組で滑りました。タイムは34秒94の五輪記録となり、スタンドは大いに沸きました。

このときです。小平選手は、右手の人さし指を口元に立てました。観客に向けて「静かに」という合図を送ったのでした。

次の15組には金メダルを争うライバル李相花選手(韓国)がいました。李をはじめ後続の選手たちに、レースに集中してもらいたかったのです。

小平選手はもちろん、優勝を目指していました。しかし、こうも考えていたのでしょう。

自分自身もベストを尽くす。そして、相手にもベストを尽くしてもらいたい。その上で勝つ。

競争相手にベストを尽くしてもらうために、観客に合図を送ったのです。

「こういう行動をとった小平選手をどう思う?」

子どもたちに問うと、口をそろえて答えました。

「格好いい!」

高校野球でも、最近は守備のチームがタイムを取ってマウンドに集まると、攻撃側の応援団は楽器の音量を下げています。相手チームが、作戦などを話しやすいように配慮しているのです。

けがをした相手チームの選手に冷却スプレーを差し出したり、熱中症の対策として飲み物を届けたり。そんなシーンをよく見かけます。

「なぜ、こういう行動をするのだろう。勝つことだけを考えたら、相手の主力選手がけがで退場してくれた方が有利になるかもしれないよ」

子どもたちは考え込みます。

「相手の邪魔をするのは格好悪いよ」

「堂々と勝った方が気持ちいい」

「その方がおもしろいよ」

何げない雑談ですが、子どもたちの言葉はスポーツの本質をついていると言えます。

「sports(スポーツ)」の語源は、ラテン語の「deportare」に由来するとされ、もともとは「運ぶ、運搬する」といった意味でした。ここから「気分を転じる」といった精神的な転換…つまり気分転換を表すようになったといわれます。

試合を「game(ゲーム)」、参加者を「player(プレーヤー)」と表するように、もともとスポーツは「遊び」です。日々の労働や義務から離れて、気分転換をして「楽しい」「おもしろい」という思いを味わうためにプレーするわけです。

しかし、一方のチームがルールを守らなければどうでしょうか? ゲームはおもしろくなくなってしまいます。参加した皆が「楽しむ」ためにはルールが必要なのです。

相手がダラダラと手を抜き、ふざけながらプレーしていたらどうでしょうか? やはり、おもしろくなくなってしまいます。だから、楽しむためには、互いに全力プレーが必要です。

1人で野球の試合はできません。仲間も、対戦相手もいなければゲームは成り立たず、楽しめません。だから、楽しむためにチームメートや対戦相手は大切なのです。

スポーツマンシップの根幹にあるのは、スポーツを、ゲームを「楽しむ」という気持ちです。スポーツを「楽しむ」ために、ルールや仲間を大切にして、全力で臨むのです。

スポーツマンシップについては、今後もさまざまな形で記事にしていきたいと思います。【飯島智則】