NHK前田晃伸会長(75)は13日、東京・渋谷の同局で定例会見を行い、23年度に受信料を値下げする方針を発表した。この日、外部の有識者でつくる最高意思決定機関の経営委員会で了承され、この日発表した21~23年度の中期経営計画に盛り込んだ。

値下げの原資は、コストの圧縮や新放送センターの建設計画抜本的見直しなどの経営効率化で生じた繰越剰余金を積み立てる制度を導入して700億円を捻出する。これは、現在の受信料収入の約1割にあたる。NHKの繰越剰余金は近年増加しており、20年度末の残高は1450億円の見込み。また、新放送センターの建設積み立て資産は約1700億円ある。

昨年8月にNHKが発表した経営計画案では、値下げの明記は見送っていた。だが、武田良太総務相が、新型コロナウイルス禍で家計負担を軽減するため、早急な受信料の引き下げを求めていたこともあり、値下げに追い込まれたようだ。

経営委員会も昨年8月の計画案からさらに収支を改善し、受信料値下げの方針を明記したことを評価した。

昨年8月の計画案では、BS1、BSプレミアム、BS4Kのうち23年度中に1波を削減し、さらに、4Kの普及を見据え、将来的には1波への集約を検討するとしていた。BS8Kも設備投資などを抑制するほか、ラジオも現在の3波から2波(AM、FM)へ整理する方針を示していた。そのほか、番組経費の見直しや設備投資など固定費経費への切り込みなどで、3年間で700億円規模の経費を削減する方針を示していた。

NHKは改革の方針を示したものの、経営委員会がパブリックコメント(意見公募)を実施したところ、「受信料が高すぎる」などというさらなる値下げを求める意見が多く集まったという。

受信料は現在、地上波契約が1225円、衛星契約も含めると2170円。(口座振替かクレジットカードで2カ月ごとに支払う場合)