国立劇場で上演中の、歌舞伎と落語の同時上演、「歌舞伎&落語 コラボ忠臣蔵」に行ってきた。春風亭小朝の落語を聞いて、中村芝翫の歌舞伎を上演するという企画。同時上演は初めてだという。かなり楽しめた。

小朝がまず、落語の「殿中でござる」「中村仲蔵」を口演した。「殿中-」は、あだ討ちされる側、吉良上野介サイドから見た、あだ討ちまでの過程が語られる。「忠臣蔵」はあだ討ちする側の物語なので、吉良に焦点を当てると違った側面が見えてきておもしろい。

「中村仲蔵」は、歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」の五段目に登場する斧定九郎(おの・さだくろう)の形(かた)を作った、実在の歌舞伎俳優の物語。役の研究、アプローチ、演じる様子、観客の反応がどれもドラマチックで、頭の中に明確に浮かぶ。結末が分かっていながらも、ワクワク、ドキドキする噺(はなし)の1つだ。

小朝の2席で笑い、十分楽しんだ後、芝翫が早野勘平を演じる「仮名手本忠臣蔵」の五段目、六段目が上演された。五段目は中村仲蔵が役作りした斧定九郎が登場する場面があるので、ついさっきの小朝の噺が重なる。武家を勘当され、盗賊になった定九郎の、無慈悲で冷酷な殺しの場面だ。せりふはたった1つ、盗った金を数えて言う「五十両」だけなのだが、なんと印象的なことか。ただ、「五十両」のせりふを、今か今かと待ってしまうように見られる役なので、役者はやりにくいかもしれない。さらに今回は、つい先ほど、小朝が「中村仲蔵」を口演した直後だ。やりにくさが増しただろうが、ベテランの中村歌六が青白く燃えるような定九郎を演じた。初役だそうで驚いた。

五段目、六段目は早野勘平という男が主人公だ。恋人とデートしていて、主人の浅野内匠頭の一大事に駆け付けられなかった、という男。後悔に後悔の日々で、恋人の実家で暮らしている。そもそものところから、行き違い、すれ違いの多い男なのだが、五段目、六段目でこのすれ違い、行き違いが重なりに重なって悲劇が起こる。

六段目に登場する義母おかやを演じた中村梅花が絶品だった。死んでしまった夫与市兵衛への愛情が切ないし、大事で大事でたまらなかった婿、勘平を疑わざるを得ない状況になった時の混乱。おかやが泣くと本当につらくて、悲しかった。

梅花は、中村芝喜松(しきまつ)と名乗っていた時代から、おかやを何度もつとめている。この役で賞を受けたこともある。筋書き(パンフレット)では、梅花がおかやという役について、役の作り方について語っている。さみしく、悲しげな梅花の顔が頭から離れないのだが、筋書きの素顔の写真が、かっこよくておしゃれなのにまたびっくりした。おかやが泣かない世界線はなかったのかな、すれ違い、行き違いが招いた悲劇はどうやったら防げたのかな…と思いながら劇場を出た。

今月の国立劇場、おもしろいのでぜひとも、とおすすめしたい。【小林千穂】