★法務省や検察庁と自民党がもめている。刑事裁判をやり直す再審制度の見直しに関わる刑事訴訟法改正案の扱いについてだ。前法相で党司法制度調査会長・鈴木馨祐を始め法務省政務三役経験者が顔をそろえるが、国会議員には弁護士資格を持ちながら政治家もしているダブルバッジと呼ばれる者が多い。与野党にも幾人もいるが、自民党内で70年続く裁判の長期化の一因とされる検察の不服申し立て(抗告)を禁止することや全面的な証拠開示が盛り込まれておらず15日に開かれた法務部会・司法制度調査会合同会議では異を唱える議員が多く出た。
★自民党は複雑だ。このダブルバッジの議員たちは司法制度の矛盾や不条理に直面してきた経験者が多く、政治家として司法制度の法改正でより良い司法制度を構築したいとの思いが強い。ことに1966年に静岡で起きた袴田事件は、14年に地裁で再審開始決定が出たが、検察側の抗告で再審が始まったのは9年後の23年。再審請求から無罪確定まで43年もかかったなど冤罪(えんざい)事件が続いていたことに対する反省がこの議論に拍車をかけた。一方、政治とカネなど一連の疑惑で痛くない腹かどうかは知らないが、検察にターゲットにされ政治家人生をめちゃくちゃにされたという思いが自民党議員にはある、またはそれに関係したことがある議員や、検察に呼ばれて事情を聴かれ、それが“リーク”によって火のないところに煙が出るなど疑惑の議員にされたり、片やうまく逃げきった議員がいるなど、検察の裁量に疑問を持つ議員も多い。それに過去にも何とかしてくれる法務官僚がいたが、彼らとうまく付き合おうとする議員もいるからややこしい。
★法務省は旧内務省の残滓(ざんさい)を残す官僚制度の象徴のような存在。検察と政治の戦いは時に国民の喝采を浴びるものの、冤罪の疑いの残る裁判の再審にこぎつけるにはあまりにもハードルが高く、あまりにも時間がかかる。前例踏襲ばかりで検察の歴史を塗り替えることや、今までの甘い捜査や裁判でのでたらめを認めない限り、国民や与野党議員の理解は得られないだろう。自民党の誰が賛成、誰が反対かを見ておくことも司法との向き合い方がわかって面白い。(K)※敬称略


