★右派からは「あいつは左派だ」といわれ、左派からは「あいつは右派だ」といわれるように、さして立脚点の違わないものでも左右に分けたがることには、霞が関の役人の作文力とそれを意図的になのだろうか、うのみにするメディアの不勉強がある。安全保障関連の分野から拾ってみても「軍事費」と「防衛力強化」のようにいずれも中立的で他意のない言葉でも、左派が軍事費というと「無駄遣いのように」聞こえ、右派が防衛力強化と言えば「合理的で必要な考え」に聞こえるといった具合だ。今、ネットを含めてメディアは中立を意図することなく、恣意(しい)的に言葉を選び、扇情的に使い分け分断をあおってはいまいか。

★一方、中立化を念頭に置くように見せる建て付けで言葉をやわらげ、法律の真の目的をぼかすことが最近顕著だ。例えば15年成立の平和安全法制整備法。自衛隊法、PKO協力法、周辺事態法など10本の法律を一括改正したもの。実態は在外邦人の保護措置、米軍等の部隊の武器保護のための武器使用など。国際平和支援法も後方支援を包括的に可能にする法律。重要影響事態安全確保法は16年に周辺事態法が改正され成立。武力攻撃事態法も昔は有事法制と言われていたが名称が変わった。特定秘密保護法も国家機密管理法が適切だろう。「防衛関連」「軍事関連」という言葉は消え「安全保障」に置き換えられ「強化」は「整備」「管理・規制」は「保護」に変わった。関連の法律には「安全」「保護」「平和」「協力」「枠組み」「事態」「環境整備」などの一般用語を使い徹底的に和らげてきた。それは和らげというより、法律の趣旨が法律名に反映されていない。

★少し枠を広げれば法律ではないが、街中にある「監視カメラ」は「防犯カメラ」に。旧社会党時代は今の「マイナンバーカード」導入は「国民総背番号」だとして反対し立ち消えた。言い方を和らげれば、国民から不安や恐怖心が取り除かれる。法律名だからとメディアは言うだろう。だが成立の経緯や当時の議論、それまでの名称などが加筆されれば違った見方も生まれるはず。中立を装う和らげには注意が必要だ。(K)※敬称略