朝夕の混雑が復活し、気になる点が増えてきた
全国の私鉄が加盟する日本民営鉄道協会(民鉄協)が毎年発表している「駅と電車内の迷惑行為ランキング」の最新版(2022年度版)が2022年12月20日に発表された。同年10~11月に民鉄協のホームページ上でアンケート調査が行われ、3305人から回答が得られた。はたしてどのような結果となったのだろうか。
「座席の座り方」が1位に復活
2022年度における迷惑行為の1位は「座席の座り方」。席を詰めない、足を伸ばすなどの行為だ。過去10年間にわたりランキングの上位を占めており、2019、2020年度は1位だった。2021年度に2位に転落したが、今回は1位に返り咲いた。
周囲の乗客が迷惑と感じる座席の座り方はいろいろあるが、アンケート結果によれば、座席を詰めて座らないという行為が占める割合は減っている。ロングシートにくぼみを付けるなどして座席間隔を開けずに座ってもらうようにする鉄道会社の努力が身を結びつつある結果だ。一方で、逆に座りながら足を組んだり伸ばしたりする行為の割合が増えている。
2位は「騒々しい会話・はしゃぎまわり」。コロナ禍の2021年度は1位だった。コロナ禍にあっては駅や電車内における大声での会話はたとえマスクをしていても気になるものだ。その意味で、この項目が1位から転落したというのは、徐々にコロナ禍前の日常に戻り始めている表れかもしれない。
3位は「乗降時のマナー」。扉付近に立ちほかの乗客の乗降を妨げるなどの行為で、2020年度から3年連続の3位だ。
4位は「荷物の持ち方・置き方」で昨年度の6位から順位を上げた。朝夕の時間帯は列車が混雑しはじめており、背負いリュックの持ち方、床に置かれたキャリーバッグなどが気になるという人が増えてきたのだろう。5位は「周囲に配慮せずせきやくしゃみをする」。昨年度の4位から順位が下がった。これらの項目の順位変動も、コロナ禍が落ち着いて、日常に戻り始めていることを示すものといえる。
6位以下で順位の変動が大きいのは、9位の「優先席のマナー」。昨年の13位から一気に順位を上げた。また「その他」も昨年の16位から11位へと順位を上げた。ランキング項目にはない迷惑行為が増えているのだ。
12位の「エスカレーター、エレベーターの利用の仕方」も2020年度の16位、2021年度の14位からじわじわと順位を上げているのも気になるところだ。鉄道各社はエスカレーターの乗り方について啓蒙(けいもう)活動を行っているが効果は上がっていないようだ。
一方で、6位以下では順位を下げた項目もある。「ヘッドホンからの音もれ」は昨年度の9位から今回は10位へ。「車内での化粧」は11位から13位へ。「電車の床に座る」は12位から14位へ。「混雑した車内での飲食」は10位から15位へ順位を下げた。これらは過去の推移を見ると順位が低下傾向にある。マナーが浸透してきたようだ。
関西は車内での会話に寛容?
関東と関西に分けた地域別のランキングも発表されている。結果は以下のとおりだ。
関東
1位:騒々しい会話・はしゃぎまわり
2位:座席の座り方
3位:乗降時のマナー
4位:周囲に配慮せずせきやくしゃみをする
5位:スマートフォン等の使い方
関西
1位:荷物の持ち方・置き方
2位:騒々しい会話・はしゃぎまわり
3位:座席の座り方
4位:乗降時のマナー
5位:優先席のマナー
関東と関西で順位が違うのが興味深い。騒々しい会話やはしゃぎまわりが関東でトップ、関西で2位という結果は、関西のほうが車内の会話に寛容ということを示しているのだろうか。
一方、関西でトップの荷物の持ち方・置き方は関東では上位5項目に入っていないのが興味深い。
荷物の持ち方・置き方は2018年に迷惑行為ランキングの総合1位になったことがある。このときは関東で1位、関西で2位だった。つまり、その後、関東では荷物の持ち方・置き方のマナーは改善されたが、関西ではあまり改善していないということになる。これは関東と関西の鉄道会社の啓蒙活動の差によるものなのか、それとも地域性の違いによるものなのか。迷惑行為ランキングから実に多くのことを考えさせられる。
【大坂 直樹 : 東洋経済 記者】