愛する娘が失踪して3カ月。事件の風化を恐れる母は唯一、取材を継続する地元テレビ局を頼みにするが、メディアを使うことに消極的な夫に、いら立ちを覚える。その中、娘の失踪時にライブに行っていたことが知られ、育児放棄とSNSでたたかれて自らを見失い、失踪時に娘とともにいた弟に取材を受けるよう強く求め、追い込んでいく。家族を密着取材するテレビ局記者も、局からセンセーショナルな取材、企画を求められ、戦うも、苦しい立場になっていく。
1つの事件を取り巻く人間模様の1つ1つに深いメスを入れ、心理を浮き彫りにした珠玉の1本だ。人気漫画、小説を実写化し、ともすれば話題ばかりが先行するような映画が主流の中、脳内から物語を生み出し、脚本を書き、1本の映画を作り上げるオリジナルの企画は、ますます少なくなっている。手がけた長編13本中、オリジナル作品が10本を占める吉田恵輔監督の、一映画監督を超えた作家としての手腕は、興行成績含め、今作で正当に評価されてしかるべきだろう。
自らに飽きていた、変えて欲しいと17年に吉田監督に直談判した、主演の石原さとみがスクリーンに刻み付けたものは、間違いなく新境地だ。石原にスポットが当たりがちだが、夫役の青木崇高、弟役の森優作、記者役の中村倫也と小野花梨…共演陣の芝居も出色だ。中でも中村は主演ではないが、自身の映画としての代表作に、たどりつけたのではないか。【村上幸将】
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