1964年(昭39)の東京五輪で正式種目になったバレーボールだが、2020年大会では都内で行われない可能性があり、バレー関係者は戸惑いを隠せない。有明アリーナ(江東区)で決まっていた会場だが、小池百合子知事の指示で調査した都政改革本部が横浜アリーナを代替会場として提案。今月末に4者協議で結論が出される。東京大会組織委員会の理事で76年モントリオール五輪金メダルの荒木田裕子氏(62)が、選手目線の声を代弁した。

 試合時間が読めないバレーボールでは、体を温めるウオームアップの時間調整が難しい。練習時も試合と同様、足にがっちりテーピングをして、シューズのひもをキュッと結ぶ。そのまま試合に突入する必要があり、試合会場に隣接して、練習場が必要となる。

 横浜アリーナには大会開催要件である練習コートを2面取れる場所がなく、都調査チームは隣接地に仮設で対応するというが、有明アリーナ(以下有明)は2面とれるサブアリーナを完備する予定。荒木田氏は「都内に1万5000人入り、練習コートが2面ある会場がない。仮設では五輪後に撤去され、選手たちに何も残らない」と主張する。

 代々木第1体育館は約1万3000人収容だが、練習会場となる代々木第2では2面が取れないという。東京体育館は仮設席を設置し、ようやく約1万人収容となる。国際大会を開けばチケットが売り切れるバレーボール界としては、首都に有明規模のアリーナを整備することは悲願だ。「五輪後のバスケットボールや他のインドア競技にとっても必要」とも話す。

 五輪ムードや祝祭感を出すにも有明は必要だと指摘。招致ファイルでは有明地区でバレーボール、体操・新体操・トランポリン、テニス、自転車(トラック、BMX)を行う予定だったが、自転車トラックが静岡県伊豆市に変更。リオデジャネイロでは十数競技が五輪公園の1カ所で見られたが、東京では五輪公園はないため「家族が一日中、五輪を楽しめる場所に有明地区がなるはずだった。バレーボールまでなくなったら、東京に五輪を集中して見られる場所がなくなってしまう」と危惧した。

 1964年大会で使用した代々木第1体育館や日本武道館は「日本のアート、レガシーとして、スポーツだけでなく文化になっている。有明も必ずそうなる」。前回大会で正式種目となったバレーボールを「おかえりなさいと、東京で迎えたい」と語った。【三須一紀】

 ◆荒木田裕子(あらきだ・ゆうこ)1954年(昭29)2月14日、秋田県仙北市生まれ。角館南高校卒業後の72年に日立入社。76年モントリオール五輪では金メダル獲得に貢献。78年に引退後、英語を学ぶため共立女子短大入学。その後、スイス、ドイツで指導し、ドイツ語を習得。20年東京五輪招致委理事でスポーツディレクターを務める。現在、日本バレーボール協会女子強化委員長。