長野県内などで大麻所持者の一斉摘発が行われた。厚生労働省関東信越厚生局麻薬取締部と神奈川、長野両県警などは25日までに、大麻取締法違反容疑(所持など)で、長野県内や静岡県に住む27~64歳の男女計22人を逮捕した。うち9人の自宅などからは、乾燥大麻約8キロ、乾燥中の大麻草7本などを押収した。東京、横浜、長野、名古屋の各地方検察庁に容疑者の身柄を送った。

 麻薬取締部によると一斉捜索は23、24日に行われた。逮捕されたのは、池田町の林業、荒田裕容疑者(48)と妻の久子容疑者(36)、大町市の自営業衣笠秀喜容疑者(48)と妻の朱美容疑者(45)ら。衣笠容疑者夫妻ら11人は容疑を認め、荒田容疑者夫妻ら11人は否認もしくは一部否認している。22人は長野県内外から同県大町市、池田町の過疎の限界集落に移住、その後に一部は静岡に移ったという。

 麻薬取締部によると、時期は不明だが、逮捕された男女らは中心人物を置かない「ゆるやかな大麻コミュニティー」を形成。同居はせず、それぞれが自立して暮らしていたという。各自宅で大麻の栽培、乱用していたとみられる。同部では、コミュニティーが周辺で音楽イベントなどを主催していたことから、ここで大麻の受け渡しが行われた可能性も指摘し、実態解明を進める。供述をもとにほかに大麻の所持者がいないか調べる。一斉捜査について「これだけの人数なので複数の合同捜査になった。県警側でも把握はしていた」と説明した。

 大量の大麻所持者がいた大町市、池田町の関係者も驚きを隠せない。人口約2万9000人の大町市は、移住者や周辺での音楽イベントは、把握していなかった。市関係者は「過疎が進んでいるので首都圏のセミナーなどに(移住募集の)出展をしたことはある。県外からの移住者も、市の窓口を通さずに移り住んでいたのでは。把握が難しい」と説明した。

 池田町は人口約1万人。町役場の職員は「山の奥の方だとしたら人も本当に少ない。人が集まって大きな音を出したとして、ほとんど気付かれないと思う」と話した。

 ◆長野県大町市・池田町 北アルプスを望み、大町市は立山黒部アルペンルートの玄関口。池田町は東南に隣接。人口は大町市が2万7587人、池田町は9909人(10月1日現在)。限界集落のあった八坂村、美麻村(いずれも現在は大町市)は山村留学の発祥地として知られる。リオ五輪バドミントン女子シングルス銅メダリストの奥原希望は大町市出身。池田町名誉町民第1号はソウル、バルセロナ両五輪男子マラソン連続4位の中山竹通氏。タレント乙葉も池田町出身。