豊洲市場の土壌汚染対策を検討する東京都の「専門家会議」が11日、築地市場内で行われ、大紛糾の中、安全対策の提言を取りまとめた。都は地下空間の対策工事をした場合、最長1年10カ月かかり、その間は豊洲への移転はできないとした。築地市場残留派からは怒号が飛び交い、午後3時予定だった会議終了は同6時ごろ。怒りは収まらず、平田健正座長が退室した後も、約30人が講堂内に残り、都職員に怒鳴りつけるなど大混乱となった。

 「強行採決だ」「行政の信頼の失墜だ」。豊洲市場への移転に反対する市民らが、提言の取りまとめを延期するよう求めた。平田座長らは約10分間、別室で協議したが再開後、市民らの要望や質問は受け付けず提言を取り決め、閉会した。

 東京魚市場卸協同組合(東卸)の早山豊理事長は「都議選というタイミングもあるかもしれないが、私たちは市場と心中しなければならない一生の問題だ」と訴えた。築地女将さん会のメンバーは「裁判を起こします」と怒声を上げた。

 会議終了後も、築地残留派は築地市場講堂に残り、「平田出てこい!」と叫び続けた。予定されていた記者会見が開けない状況に急きょ、会議室の場所を変えての会見となったが、そこにも市民が押し寄せ、混乱状態となった。

 平田座長は「専門家会議の出発点は、盛り土がなくて地下空間だったところを、どう対策するかに限る。『移転ありきの議論』と言われるのはつらい。議論の行方が専門家会議から離れていった」と、会議を閉じた苦しい胸の内を語った。前回会議の休会を含めた、これまで7回の会議を振り返り「とても苦しく、記事に出来ないようなヤジがある。(築地関係者が)そこまで厳しい状況に追い込まれていることは理解している。だから(専門家会議も)持ちこたえてきた」と感想を述べた。

 都の市場問題プロジェクトチーム(PT)も既に報告書を策定しており、小池百合子知事が移転判断で参考にする有識者の意見が出そろった。小池氏は専門家会議とPTの意見を、近日中に行われる庁内の「市場のあり方戦略本部」で議論し、総合的な判断を下す方針。都議選(23日告示)の前に結論を出すのかどうかが、焦点となる。【三須一紀】