希望の党の小池百合子代表(65)から同党創立メンバーの刺客を放たれた石原伸晃氏(60=東京8区)と石原宏高氏(53=東京3区)。兄弟は必死の選挙戦を続けている。伸晃氏への刺客は、民進党を離党し東京9区から鞍替えした木内孝胤(たかたね)氏(51)。勢いのある立憲民主党の吉田晴美氏(45)の善戦など野党票が分散し、苦戦中だ。
JR西荻窪駅。旧民主党の政権交代が起きた09年も含め9期27年間、旧東京4区と東京8区で当選中の伸晃氏は、赤いジャンパー姿で訴えた。「今回の衆院選は政権選択選挙。3週間前と2週間前にできた政党と共産党の連合軍に政権を委ねるのか」。小池氏が放った希望の党木内氏に加え、立憲民主党の新人吉田氏を意識しながらも、堅調な選挙戦を進める。
東京8区では、前回の14年衆院選の後、元民主党副代表で民主党の支部長だった円より子氏(70)らが野党共闘を目指してきた。しかし、選挙戦直前に希望と立憲が誕生。結局、6人が乱立する混戦となった。
小池氏は、昨年の都知事選での石原慎太郎氏(85)の「厚化粧」発言以来、石原家と対立してきた。7月の都議選で自民党都連会長だった伸晃氏も宿敵だ。東京8区の刺客は、8月に民進党を離党し、東京9区からの鞍替えとなった木内氏。朝から終電近くまで駅頭に立ち、毎日フル回転している。ベーシックインカムの導入など得意の経済政策で浸透を図る。
誤算だったのは、民進党の同僚だった吉田氏支持層の拡大だ。都議選の杉並選挙区では都民ファーストが計7万6000票、自公は計8万4000票、民進党は計2万4000票を獲得。都民ファと民進党の支持があれば、伸晃氏打倒も可能なはずだった。
しかし、小池氏自身の「排除」発言への反発などから立憲民主党が躍進。吉田氏は「ダイバーシティとは違いを尊びあうこと。『こんな人たち』とか『排除する』とか、人に対して使う言葉ではない」と安倍、小池両氏を批判。報道機関の終盤の情勢調査では、伸晃氏に続く支持を集める。
木内氏は「『排除』批判は違和感がある。政党だから政策理念で別れるのは当たり前だ」とした上で「悲観はしていない。無党派層に訴えていく」と最後の追い込みにかける。優勢が伝えられる伸晃氏陣営も「都議選も感触は良かったが、ふたを開ければ小池さんの圧勝。最後までしっかり訴えていく」と希望の党への警戒を緩めず、勝ちきるつもりだ。【清水優】