公式戦29連勝の新記録を樹立した将棋の最年少プロ、藤井聡太四段(15)が、来春の高校進学を決断した。25日、日本将棋連盟が発表した。愛知県有数の進学校である中高一貫校の名古屋大学教育学部付属中学に通う3年で、高校進学か、将棋1本に専念するか迷っていた。たっぷりと時間をかけて「次の一手」を決め、同連盟を通じて「すべてのことをプラスにする気持ちでこれからも進んでいきます」とコメントした。

 ここ数カ月、「強くなることを第一目標にしたい」と、進路問題で悩んでいた。現在、愛知県瀬戸市の自宅から、名古屋市内にある中学に通っているが、将棋との両立は肉体的にもハードだ。対局が週に2日以上入るときもあり、対戦が長引くと大阪や東京に宿泊する日もある。強くなればなるほど対局は増える。進路が注目される中、大好きな将棋に専念したい気持ちも大きかったが、中学生でプロ棋士になった先人たちの「定跡」があった。

 過去、中学生でプロ入りした加藤一二三・九段(77)、谷川浩司九段(55)、羽生善治棋聖(47)、渡辺明2冠(33)は、いずれも高校へ進学。師匠の杉本昌隆七段(48)は「中高一貫校からの進学は自然な流れで、現時点ではベストの選択」とコメント。愛弟子が悩む姿を間近で見ていただけに「選んだ道を最善手にするのは本人次第です。学業と将棋のさらなる精進を期待します」とエールを送った。

 同世代と過ごせる高校生活は、長い人生で貴重な時間。勝負の世界から離れた場所で、視野も広げることができる。進路の決断は本人に委ねていた母裕子さん(47)は「今まで通り、見守り応援していきます」。高校生になっても、藤井は学業と将棋の両立という「難局」に立ち向かう。【松浦隆司】

 ◆日本将棋連盟・佐藤康光会長の話 悩み、考え、決断したことは1つの財産。大いなる自信を持って日々まい進してもらいたい。

 ◆松尾清一・名古屋大学総長の話 名大付属は独創性とチャレンジ精神に富んだ学校。高校生活を通して、大きな飛躍を期待しています。