人口48万人の千葉県市川市で、市長選が再選挙となり、選挙日程が決まらない状況になっている。先月26日投開票の市長選には候補者5人が出馬。いずれの候補も法定得票数(有効投票総数の4分の1)に達せず、再選挙となった。市選管は来年1月14日の投開票日を決めたが、今回の選挙についての異議申し出があり、日程が決められない状態となった。再選挙には今回の候補者全員の5人が再出馬の意向を表明。市町村長選挙で初の再々選挙の可能性もあり、市政への影響も懸念されている。

 2期務めた大久保博市長の任期満了に伴う市長選には、元衆院議員村越祐民氏(43)、元市議高橋亮平氏(41)、元県議小泉文人氏(44)、元県議坂下茂樹氏(43)、元衆院議員田中甲氏(60)の5新人が出馬。村越氏が民進、共産、自由、社民などが推薦する野党共闘の形で選挙戦に臨んだ。自民党は坂下氏を推薦も、同党からは小泉氏も出馬して自民党も分裂。改革を掲げる高橋氏と、市川市議から衆院議員まで務めた地盤を持つ田中氏も出馬し、5候補が拮抗(きっこう)する激しい展開が続いた。

 先月26日の投開票。法定得票数は2万9770票だったが、最多得票の村越氏でも2万8109票で、1661票足りなかった。首長選では6例目の「再選挙」が決まった。

 村越氏は26日深夜、「法定得票数に満たなかったのはすべて候補者の不徳」とした上で「明朝から再起動します」と再選挙への出馬を表明。ポスターの新調も検討。次点の坂下氏も同日夜に支援者に「頑張る」と意思表明。トップに約2000票差の田中氏も「出ないという選択肢はない。再選挙で有権者に関心を持っていただければ、伸びしろはある」。高橋氏も「選挙後に支援してくださる方も増えた」と意欲を見せるなど、5人全員が再選挙への出馬の意向を示している。

 過去5例の再選挙では、候補者が4人以下となり、いずれも決着がついている。再選挙とはいえ、新たな選挙として行うため、今回の5人以外も出馬は可能。首長選史上初の再々選挙の可能性も出てきた。

 市選管は年末年始を避け、来年1月14日投開票の再選挙日程を決定。しかし、市長選と同日選だった市議補選(2議席)に出馬し、次点だった元市議石崎英幸氏(48)が先月29日、「(市議補選の)開票時に6000票の束が立会人から見えないところへ持ち出され、持ち込まれたという目撃証言が複数ある。市長選の開票でも村越氏の票の山の中に、高橋氏の1000票の束が混ざっており、立会人が指摘した」と異議申し出を行い、再選挙の日程は白紙となった。

 現市川市長の任期満了は今月24日。日程がずれ込み、さらに再々選挙となれば、それだけ市長不在の期間は長くなる。再選挙となった92年の奈良県広陵町長選では、異議が最高裁までもつれ、1年7カ月間にわたって町長不在の状況が続いた。だが石崎氏は「選挙は民主主義の根幹。不正の疑いがあれば、納得のいくまで説明を求める」とし、市選管、県選管の解答次第では、提訴の可能性も排除しない構えだ。【清水優】

 ◆市川市 千葉県北西部にあり、江戸川と旧江戸川を挟み東京都と接する首都圏へのベッドタウン。人口48万4698人(10月31日現在)と県内4番目。1934年(昭9)誕生と、千葉市、銚子市に次いで古い。県内の梨栽培発祥の地。臨海部には漁港や工場もある。