東京都と築地市場(中央区)の業界団体でつくる「新市場建設協議会」が20日、都内で開かれ、移転後の豊洲市場(江東区)の開場日を来年10月11日と決めた。豊洲市場は16年11月7日に開場予定だったが、同年8月に就任した小池百合子知事が安全性への疑問などから移転を延期。当初より約2年遅れて決着した。

 協議会後の会見では業界団体が小池氏へ苦言を呈した。築地市場協会の泉未紀夫副会長は移転延期について「費用、時間をかけて、業界の分断、混乱を招いた」と酷評した。

 都議選直前の6月20日、小池氏が「築地は守る、豊洲は活かす」と基本方針を示し、豊洲のにぎわいを創出する「千客万来施設」の事業者・万葉倶楽部(神奈川県小田原市)は、築地が競合相手になりかねないとして、撤退も辞さない構えを見せている。泉氏は万葉倶楽部のことも考え、築地再開発の調査予算も「ゼロにすべきだ」と断じた。

 一方で、水産仲卸の中には移転反対を訴える業者も多い。その急先鋒(せんぽう)である「築地女将さん会」はこの日、16年の都知事選後、豊洲移転延期について小池氏に助言した宇都宮健児弁護士とともに会見。宇都宮氏は「豊洲は土壌汚染問題があり、水産仲卸が移転してもお客さんが付いてこない。豊洲移転は仲卸業者の切り捨て政策」と述べ、今後は「座り込み」や、法廷闘争も辞さない構えだという。

 都は築地の跡地を20年東京五輪・パラリンピックの輸送拠点などに整備する計画。移転日が正式決定し、駐車場整備は前進したが、千客万来施設や移転反対派など、火種はくすぶっている。

 一方で、小池都政は大ピンチ。1年5カ月をかけた豊洲市場政策はほぼ、舛添都政時代に逆戻りしつつある。残された大きな柱は「築地再開発」のみとなった。【三須一紀】