線香で尻に火が付いた? 茂木敏充経済再生担当相が、秘書による選挙区内有権者への線香配布問題で、追い詰められている。公職選挙法にのっとった対応だったと主張するが、1月31日の参院予算委員会では、公選法違反の疑いを念頭に追及する野党に、イラだった反応をみせた。衆院予算委では、公選法を所管する野田聖子総務相との「談笑シーン」がNHKの生中継に映り、与党幹部も不快感。「もり・かけ・スパ」に線香が加わり、安倍政権は乗り切れるのか。

 「先生、あの、個別の政治活動で何らかの違法性があるというなら、ご質問いただければと思いますが」。茂木氏は31日の参院予算委員会で、茂木氏の秘書による線香配布の経緯を問い詰めた民進党の森本真治氏に、不快感を示した。一方で答弁は「個別の政治活動については控えたい」と具体性に欠け、野党席からブーイングが起きた。

 今回の問題は「週刊新潮」の報道で浮上。公選法は、候補者名が類推できる方法での寄付行為を禁止している。茂木氏は先月末の衆院予算委員会で、秘書による線香や衆議院手帳の配布を認めつつ「配布物に私の氏名はなく、政党支部の政治活動として配布した」「公選法にのっとっている」と強調したが、納得できる答弁には至っていない。

 この日も、自身の線香配布は否定したが、秘書が茂木事務所の名刺を持参したかどうか指摘されると「その場に居合わせておらず、分からない」とかわした。

 線香配布の際、秘書に茂木氏と分かる言動があったか、一連の行為が公選法にある「類推」に当たるかが最大の焦点だ。野党は、かつて自身で有権者に線香セットを配り、公選法違反に問われて議員辞職した小野寺五典防衛相にも答弁を求め、小野寺氏が淡々と「経験談」を語る場面も。14年には、名前入りうちわを配って公選法違反と指摘された松島みどり法相が辞任。類似案件では議員辞職や閣僚辞任の「前例」があるだけに、野党は、閣僚辞任だけでなく議員辞職を求めて徹底追及の構えだ。

 加えて、茂木氏の態度にも批判が集中。衆院予算委員会では安倍晋三首相の答弁中、あろうことか公選法を所管する野田総務相との談笑シーンが、NHKの生中継に映り「なれ合い」のような印象を与えた。この日、自民、公明両党の幹部会で公明側が苦言を呈し、茂木氏に緊張感を持つよう求める声も拡大。茂木氏は安倍政権の重要閣僚だけに、進退に発展すれば政権に打撃となりそうだ。【中山知子】