【ソウル7日=三須一紀】平昌冬季五輪(ピョンチャン冬季オリンピック)が明日9日、開幕します。日刊スポーツ社会面では「ピョンチャンルポ~東京2020までX日~」と題して現地の様子を伝え、隣国で行われる五輪から、東京大会に向けた課題や楽しみを見つけます。第1回は、今年に入り突然の参加を表明した北朝鮮について、韓国国民の本音に迫ります。
「選手よりも金正恩、文在寅、安倍晋三、イバンカが有名で、政治が主役のオリンピックになってしまった…」。ソウル市内の男性会社員(32)はそう嘆いた。韓国政府が五輪を政治利用しないよう最初からラインを引かなかったことが「大失敗だ」と断じた。
大会スポンサーでなければ、エンブレムやマスコットが描かれた宣伝物は掲出できないことを差し引いても、首都ソウルでは自国開催の五輪熱は感じられない。むしろ市民は冷めている。報道は選手自体よりも政治重視。北朝鮮の突然の参加、女子アイスホッケーの急造合同チームに端を発していた。
男性経営者(37)は今回の問題を「韓国がシェフとして全部作った料理を、最後にスプーンだけ持ってきて食べるのが北朝鮮だ」とやゆした。女子大学院生(29)は「オリンピックの時はショーにするが、閉幕後は何もできないでしょう」、60代女性は「一見良いことだが真実性が見えない」と冷ややか。女性会社員(36)は「アイスホッケーで韓国側は守備要員を要望したのに、北は攻撃陣を入れてきた。急に出られなくなった韓国選手がかわいそうだ」と怒りをあらわにした。
韓国と北朝鮮は同一民族の分断国家。融和に期待する市民も少なくない。男性会社員チョ・ヨンスさん(52)は「平和をアピールできて良いことだ」。男性会社員キム・ドクベさん(61)は「朝鮮半島は戦争続き。これ以上、戦争になったら立ち上がれない民族。金正恩も五輪をきっかけに平和的になってほしい」と切に語った。
将来的に南北は統一すべきかとの質問でも、さまざまな意見が出た。キムさんは「同じ民族であり統一は当たり前だ。東西ドイツの場合を見てもお互いに人口が増え、メリットが大きい」。男子大学院生(27)は「ぶつかってどちらかが勝たなければ統一できないのではと心配」と戦争の可能性を憂慮した。社会思想が違いすぎて統一過程が難しいとの意見も出た。
中立的に分析する視点もあった。女性会社員(26)は、南北関係が悪化すれば外国人が訪韓を嫌がり、ビジネスチャンスが減ると危惧。「融和こそが経済発展につながる」と訴えた。
06年トリノ冬季五輪でも南北合同で開会式入場を行ったが、その夏、北はミサイル発射実験を行い、10月には核実験を実施。今回もその恐れは否定できないが、女性は「今はそれが彼らが身を守る唯一のやり方で、かわいそうな状況。金正恩だけが抜けて統一すれば互いに幸せになれる」と冷静に言った。
五輪開幕直前でも関心は政治一色。スポーツの政治利用はかねての課題だが、2年後の東京も人ごとではない。

