【江陵(カンヌン)8日=三須一紀】今日9日、開幕する平昌冬季五輪(ピョンチャンオリンピック)の開会式に安倍晋三首相(63)が出席するのに合わせ、韓国の文在寅大統領(65)との首脳会談が開かれる。文大統領が昨年末、慰安婦問題の日韓合意を再検証する意向を表明。そのことで出席の是非に揺れたが、安倍首相は「合意について日本の立場を伝える」と表明し、会談で不満を表明する。北朝鮮問題に続き、またも政治が前面に出た形だ。ソウルの日本大使館前に設置された慰安婦像前にテントを張り、座り込む若者らを取材した。
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夜間は氷点下10度を下回るソウル。慰安婦像にはニット帽やマフラーが巻かれていた。テントに常時2人がいて、約80人いるグループで交代し、24時間態勢で人が途切れることはない。
朴槿恵政権時代の15年12月28日、慰安婦問題が最終的に解決されることを確認する日韓合意がなされた。日本政府は慰安婦支援に10億円を拠出。しかし、被害者不在の合意だとし、その2日後から座り込みが始まった。文大統領が再検証の意向を示しても「適当すぎる合意で破棄すべきだ。現政府の対応も中途半端」と大学生のパク・サンヒョンさん(23)は話す。
会社員のイ・サンチョルさん(32)は重要なのは金よりも慰安婦の強制連行があったかの調査だといい「証拠がたくさんあっても民間や個人が出しても弱い。政府が具体的に調査すべきだ」と抗議を続ける理由を語った。
さらに韓国が領有権を主張する島根県の竹島(韓国名・独島)問題まで加わった。北朝鮮との統一旗に島が描かれ、日本政府が抗議する事態に。すると韓国政府は国際オリンピック委員会(IOC)の勧告に基づき開会式などの公式行事では、竹島入り統一旗は使わないとした。
イさんは「政府の中途半端さにはあきれる」。パクさんは「まだ日本の植民地みたいだ…」とうなだれた。一方で、「対馬は日本、独島は韓国という現状をいつまでも争っていたら後々、大げんかになる」と危惧した。ソウル市内の男性会社員(37)も「実際に警備しているのは韓国。自分の土地を表記して何が悪いのか」と言い切った。
南北問題に続き、日本海を隔てた東西でも、これまでの政治問題が焦点になった。平昌の次は東京五輪。“近くて遠い国”と言われて久しい日韓が、どのようなバトンリレーを見せてくれるのだろうか。