将棋の羽生善治竜王(47)と、囲碁の井山裕太7冠(28)の国民栄誉賞授与式が13日、官邸で行われた。2人は棋士伝統の紋付きはかま姿で出席し、安倍晋三首相から表彰状と盾、記念品などを贈られた。羽生は式後、都内で行われた会見で、喜びと今後の抱負を語るとともに、平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)フィギュアスケート男子シングルで連覇を目指す羽生結弦(23)にもエールを送った。

 羽生が笑顔になった。会見で、今週末に五輪で戦う羽生結弦について質問された時だった。「読み方は違うが、漢字は同じ。親近感を持っています」。スポーツ観戦は昔から大好き。けがを乗り越え、今回ぶっつけ本番で連覇を目指すことも知っている。「間を置いてもすばらしい演技を見せてくれると、期待を膨らませてくれる選手です。芸術的な滑りを見てみたいですね」と述べた。

 同じ勝負の世界に身を置く同士だが、タイトルを失ったとしても最短で1年後に挑戦者として戻ってこられる将棋界とは違う。「4年に1度。たった1回に全力をかける気持ちは、見ていると、大変な集中力と努力を一瞬のために費やしている。悔いなく、全力を出し切ってほしい」とエールを送った。

 会見に先立つ官邸での授賞式の前には、井山と談笑する姿も見られた。式には長女舞花さんも同席。娘にりりしい姿を見せる予定だった。だが通算タイトル99期を獲得して表彰は慣れているはずが、安倍首相の姿を見ると「ちょっと緊張しました」。顔をほころばせながら、話した。

 名誉ある賞をもらった後には、注目の若手藤井聡太五段(15)との公式戦初対局、朝日杯準決勝が17日に控えている。「今日の日が終わったらひと息つけると思っていたら、そうではなくなってしまった」と笑いながらも、「公式戦では初顔合わせでもあるし、公開対局でもある。私自身、張り切ってその対局を心待ちにしている」。会場が祝福ムードに包まれる中、この時ばかりは勝負師の顔に戻っていた。【赤塚辰浩】