東京五輪(オリンピック)をスポンサーだけのものにしないで-。全国から寄せられた本音や不満の声が14日、意見書という形で届けられた。日本商工会議所と東京商工会議所が鈴木俊一五輪相と面会し、アンブッシュマーケティング(便乗商法)を防止するための法制化に反対する意見書を提出した。

 平昌冬季五輪では、日本オリンピック委員会(JOC)が出場選手の所属企業や学校が壮行会を開いて、メディアに公開することを禁じたため、石田徹専務理事は「国民感情からして、いかがなものか」と、今回の要望に至った。

 民間企業や私立大学がアマチュア選手を所属させ、競技発展に寄与しているにもかかわらず、いざ五輪になると、壮行会すら公開してはいけない“異常事態”が、大きな話題となった。スポーツの発展が目的とはいえ、民間ならば宣伝PRが必要なのは当然。他の大会を圧倒する人気と知名度がある五輪を奪われたら、民間としてはかなり厳しい。

 20年東京大会へ向けては、アンブッシュマーケティング防止のため、国会で法制化への準備が進められていた。国際オリンピック委員会(IOC)が求めているためで、12年ロンドン大会、16年リオデジャネイロ大会などでは法整備された。しかし、日本の風潮にはそぐわないとの声もあり、法制化には慎重論もあった。

 大会組織委員会はスポンサー以外の大会エンブレムなどの使用を厳しく制限。東京商工会議所の渡辺佳英オリパラ委員長は「『2020』『東京五輪』の言葉も使用できない」と語り、法制化により厳格化されれば全国の企業がさらに、敬遠するため「機運醸成に水を差す」と警告した。

 商工会のような非営利団体は「応援プログラム」に申請すると「応援マーク」の使用は可能だが、地域の祭りなどで、協賛企業名の表示や物販などの収益事業があると「応援マーク」は使用できないという。祭りには屋台はつきもので、申請は不可能に近い。

 商工会議所は招致段階で25万枚のポスターを全国に掲出するなど貢献し、招致に必要な支持率アップにつなげた経緯がある。

 商工会として望ましい状態について聞くと石田氏は「長年行っている地域の祭りなどで、応援マークを使ったら『便乗商法』と言われるのはどうかと思う。地域のお祭りでは東京五輪のPRグッズなどが使えるようにしたいし、協賛企業名が入ってても応援プログラム申請を認めてほしい」と語った。商工会は五輪相と同時に、組織委や東京都にも同じ意見書を提出した。

 鈴木氏は「法制化ありきとする必要はない。スポンサーだけの五輪でなく国民の五輪でなければならない」と前向きに語った。資金力のある大企業だけしか応援できないのであれば、国民は五輪から距離を置かざるを得なくなる。