財務省の太田充理財局長は9日の参院決算委員会で、森友学園への国有地売却をめぐり、同省理財局の職員が昨年2月、8億円の値引きの根拠となったごみの撤去費に関し、学園側に虚偽の説明を求めていたと初めて認めた。関与があれば「辞める」とした安倍晋三首相発言の3日後。首相夫妻への忖度(そんたく)の疑いが再び強まってきた。

 財務省理財局職員が学園に、ごみの撤去に関する虚偽の説明をするよう求めたとする疑惑は、4日にNHKが報道。財務省は、初めて事実関係を認めた。今回の土地売却では、なぜ8億円も値引きされたかが最大の疑惑だが、これまでの「根拠」は崩壊した。

 理財局職員が学園の弁護士に電話したのは、昨年2月20日。太田氏は「地下埋設物の撤去費用に関し、『相当かかった気がする。トラック何千台分も走った気がするという言い方をしてはどうか』という話をした」と説明。「事実と異なる説明を求めるのは、間違いなく誤った対応。大変恥ずかしい」「何を言われてもおっしゃる通り。大変申し訳ない」と繰り返した。

 理財局の求めを、学園側は拒否。同様に協力要請された近畿財務局も「事実に反する」と断ったという。

 2月20日は昨年の衆院予算委員会で、理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官が「必要な廃棄物の撤去は適切に行われた」と、発言した日。3日前の17日には、民進党の福島伸享衆院議員(当時)が「8億かけてごみを撤去すれば、ダンプカー4000台くらいになる」と、“あり得なさ”を指摘。当日は首相の「辞める」発言も飛び出した。

 太田氏は「(佐川氏が)事実確認をしないまま、さも撤去したように答弁し、整合性を取ろうとした」と釈明。財務省の文書改ざんが始まったのは直後の2月下旬。背景に首相発言への忖度はなかったかあらためて疑問が浮上した。

 昨年の国会審議では分からなかった格安値引きの根拠が、1年後に「虚偽」と判明。民進党の大島九州男氏は、首相が断行した昨年の衆院選を「解散総選挙ではなく、『改ざん総選挙』だ」とし、選挙のやり直しか内閣総辞職を要求。藤田幸久氏は「森友や自衛隊問題が明らかになっていれば、国民は正しい判断をしたはずだ」と批判した。

 首相は「(自民党を勝たせた国民の)判断は厳粛に受け止めたい」と反論したが、事実関係が明らかになっていた場合、衆院解散に踏み切れたのか。うそが重なった先に成立した現在の安倍政権は、「砂上の楼閣」と指摘されたも同然だ。【中山知子】