学校法人「加計学園」(岡山市)獣医学部新設に関して「首相案件」と発言したとされる、柳瀬唯夫元首相秘書官(現経済産業審議官)が10日、衆院予算委員会に参考人招致された。

 国民民主党に参加せず、無会派となった江田憲司氏は、質問に立った際、自身が首相秘書官だった経験を踏まえて柳瀬氏を厳しく追及した。まず冒頭で「総理秘書官として常識外れのことばかり。1年生の時から知っているが、青雲の志を持っていた。別の言い方をすれば、首相の政策補佐。許認可や補助金の対象となる可能性のある事業者に会うことは常識に外れている。総理か政策秘書官から指示があったとしか思えない」と柳瀬氏を批判した。柳瀬氏は「総理からも秘書官からも指示は全くございませんでした」と答えた。

 江田氏が官邸で安倍首相と加計学園関係者と面会した時間について「4月2日は1時間半」と質問すると、柳瀬氏は「全く分かりません」と答えた。「多忙な奥の院の黒子がなぜサービスした?」と聞くと「基本的にアポイントがあればお受けした」と従前の主張を執拗(しつよう)に繰り返した。

 江田氏が「密室で、あなたがが主役になって話したのは加計だけではないのかと聞いている」と厳しく追及すると、柳瀬氏は「アポイントがあったのは加計だけ」と、またもこれまでの主張を繰り返した。

 江田氏が、堪忍袋の緒が切れたと言わんばかりに「特化戦略特区などの申請は、あまたある。加計以外に会ったことはないのか? どこと会ったのか?」などと聞くと、柳瀬氏は「自治体や民間企業の方とはお会いした。個別にお会いした方のことを口にするのは、いかがかと思うが、ベンチャーや民間の方、自治体の人と会うことはございます」と答えた。

 江田氏は安倍首相と一緒の時を含め、加計学園関係者と3回会ったと認めながら、首相に1度も報告していないと発言を繰り返す柳瀬氏に対して、首をかしげた。そして「あなたは総理と一心同体。あなたが会うと総理も? という疑念が湧く。普通、総理秘書官は自治体、事業者の要請は、担当部署がお会いして必要があれば…そういう流れで仕事する。それを異例中の異例の面談をしたことで疑念が湧く。自治体の人などに会う必要はあるのか?」と、追及の手をさらに強めた。柳瀬氏は出来るだけアポイントがあればお会いする」と、再び「アポイント」という言葉を口にした。これには江田氏も「リスク管理の、基本中の基本もわきまえていない秘書官だというのは、よく分かった」と、あきれ果てたように吐き捨てるように言った。

 江田氏は「桜の会に総理が行くのも知っていたはず。『数日前、学園の人にあって意見交換をした』と報告するのは職責じゃないか?」と突っ込むと、柳瀬氏は「特にお話ししたことは御座いません」と答えた。江田氏は「総理が立ち往生したり、知らないことがないようにするのが首相秘書官の仕事。加計理事長から『この前は、うちの人間に会ってくれて、ありがとう』と言われた時、首相がポカーンとしないように言うのが当たり前の職責」と追及すると、柳瀬氏は「長年のご友人…立ち往生ということは、なかなかない。あえてお耳に入れることではない」とかわした。

 江田氏は、自らが首相秘書官だった当時のことを引き合いに「私の時も、週に何回か総理とランチする。それに、日々の夕方の日程調整で雑談でもしなかったのか? おかしいじゃないか?」と追及したが、柳瀬氏は「一切お話しすることはございません」と答えた。江田氏は「あなたが口にばんそうこうでもしてない限り、絶対に言う」と首をかしげた。

 江田氏は「内閣法20条を知っていますか? 首相秘書官は総理の命を受けて補助するという(役割)。それを報告しないなんて、あなたのような優秀な官僚がそんなことをするのか?」と怒りをにじませて質問した。柳瀬氏が「個別の案件で総理に報告することはない」と答えると、江田氏は「ありえない」とあきれた。

 ただ、江田氏の質問に対し、柳瀬氏が明確に、やや強めに反論したシーンが一つあった。江田氏から、柳瀬氏が安倍首相の昭恵夫人付の政府職員だった谷査恵子氏と経済産業省の原子力政策課(経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部)課長時代に同僚だったと指摘した上で、谷氏が絡み疑念が膨らんだ森友学園問題について報告があったか? と質問が飛んだ。その時、柳瀬氏はやや語気を強め「根本的な事実誤認。私が課長時代に谷さんはいない。多分、時期はずれていると思う。私は谷さんは全く、存じない。森友について詳しく聞いたことは全くない」と完全に否定した。