日大アメリカンフットボール部の選手が関学大との定期戦で悪質なタックルをし、関学大の選手を負傷させた問題で、日大が23日に会見を行ったが、批判は噴出し続けている。企業の危機管理の研究、コンサルティングを手がけるプロたちはどう見たか。田中危機管理広報事務所社長の田中正博氏は「危機管理上やってはいけないことの典型として歴史に残る対応」と分析。日本広報協会アドバイザーで千葉商科大名誉教授の藤江俊彦氏は「もはや、田中英寿理事長がきちんと謝らなければ、大学の存亡に関わる状況」とした。

 電通PRセンター顧問などを歴任し、危機管理と広報のコンサルティングを続ける田中氏は、日大の会見について「謝罪会見でやってはいけないことの典型として、歴史に残る対応だった」と酷評した。

 内田前監督の会見について「指示した、しない、という因果関係は裁判まで認定されない。今は事象がすべてなのに、謝罪に絶対に必要な潔さがなかった」と指摘。さらに「うそをつく理由がない一選手の言葉を監督が公式会見で否定する日大の姿勢を、世間がどう見るか。一言の重みを分かっていない」と語った。

 会見司会の日大広報の担当者については「会見はメディアを通じて日大が社会に説明する場なのに、『(日大)ブランドは落ちない』と日大が記者と1対1で応酬した。挽回できないほどの失敗」とした。

 藤江氏も広報担当者の対応を「もう常識を超えてしまっている。日大は警察庁OBを指導陣に迎えた危機管理学部を抱え、これだけの問題に対し、非常にプロフェッショナルな対応が求められる中で、正反対の対応。仰天している」と驚きを禁じ得ない様子だ。

 内田前監督の会見内容についても「関学大と話してから公表したいというのは、相手側とうまく話をつけてから会見したかった意図が見え見え。日大は大学としての信頼を失った」とみる。先んじて単独会見した宮川泰介選手の会見を「あの姿勢が、本来は日大が取るべき姿勢。それを学生には学外で会見させ、学内での会見では監督が守るべき選手、学生の言葉を否定する。そういう経営陣によるそういう大学と見られる。来年の受験者数に影響が出るだろう」と話した。

 日大は信頼を回復できるのか。田中氏は「不祥事の上に不祥事を起こし、名誉挽回はできない。あとは学長なり理事長が、どうけじめをつけるかだ」。藤江氏は「アメフト以外のスポーツでも、日大は汚いと言われかねない状況だ」と指摘。「まず理事長が社会に対してきちんと謝り、内輪だけでなく、社会に目が開かれた人材を経営陣に入れるなど、抜本的な対策を明言しなければいけない」と話した。【清水優】