松本智津夫死刑囚ら7人の刑執行について、遅くとも年内に行われるとの見方が、政府内の「共通認識」だったことが6日、関係者への取材で分かった。
来年は天皇陛下が退位され、平成が終わり、新たな元号に変わる。ラグビー・ワールドカップ(W杯)の後には、20年東京オリンピック(五輪)・パラリンピックという世界的イベントも控える。政府関係者の1人は日刊スポーツの取材に「平成の時代に起きた凄惨(せいさん)な事件。平成のうちに1つの『区切り』をつけたほうがいい。共通の思いだった」と、打ち明ける。
一連の事件で死刑が確定したのは13人。法務省は、一連のオウム裁判が終結した今年1月以降、「一斉執行」を視野に、死刑囚を全国の拘置施設に分散した。7人の刑執行が先行したのは最終的に、関与した事件の数や役割、教団内の地位が考慮されたとみられる。
上川陽子法相は会見で7人の刑執行を今月3日に命じたことを明らかにした。「私としては鏡を磨いて、磨いて磨いて、磨ききる心構えで、慎重にも慎重な検討を重ねて執行命令を発した」と、水面下でタイミングを慎重に見極めていたことも示唆した。
7死刑囚の刑執行は、98年11月に法務省が死刑執行の事実と人数の公表を始めて以降、1日の執行では最多だ。想定問答とみられる分厚い資料を見ながら言葉を選んだ上川氏には、なぜこの7人なのか、なぜこの時期なのかという核心の質問が相次いだが、「刑執行の判断にかかわる。答えは控えたい」と、公の場では多くを語らなかった。
「死刑は人の命を絶つ、極めて重大な刑罰。慎重な態度で臨む必要がある」とした上で「重大な凶悪犯罪で死刑を科すのはやむを得ない」とも述べた。松本死刑囚については、心神喪失状態で刑の執行を停止すべきとの指摘もあったが、上川氏は一般論として「死刑確定者の精神状態は常に注意が払われ、医師の診療を受けさせるなど配慮されている」と訴えた。
◆上川陽子(かみかわ・ようこ)1953年(昭28)3月1日、静岡市生まれ。米ハーバード大大学院修了。米上院議員の政策立案スタッフなどを経て、00年衆院選で初当選。14年10月から約1年、法相を務め、17年8月の内閣改造で法相に再登板。手堅さで知られる。議員立法で犯罪被害者基本法の成立に尽力し、地下鉄サリン事件で夫を亡くした高橋シズヱさんとは旧知の仲。自民党岸田派。当選6回。衆院静岡1区。法相として死刑執行を命じたのは、計10人。