20日に84歳の誕生日を迎えられた皇后さまが、来春の退位後の「楽しみ」として読書を挙げ、「ジーヴスも二、三冊待機しています」とユーモアたっぷりに回答された「ジーヴス」が大反響を呼んでいる。

ジーヴスは英国の作家P・G・ウッドハウスのコメディーに出てくる天才執事の名前。国書刊行会からシリーズ全14冊が刊行され、文芸春秋からも「事件簿」シリーズ2巻が出ている。日本ではまだ読者は少なく、シリーズ累計10万部という国書刊行会も最近は年に数百冊出るだけ、文芸春秋も単行本は品切れで、文庫だけを販売していた。

しかし、皇后さまの回答で週明け22日から両社には取次や書店から問い合わせや注文が殺到。「連日、1000冊を超える注文」(国書刊行会の礒崎純一出版局長)が入る事態となっている。このため、文芸春秋では各3万5000部、国書刊行会も5000~1000部の増刷を決定。24日、「皇后陛下お誕生日のご回答で話題!ジーヴスも二、三冊待機しています」(国書刊行会)、「ジーヴスも二、三冊待機しています(お誕生日ご回答より) 皇后陛下もご愛蔵」(文芸春秋)という新しい帯も完成した。

礒崎出版局長は「ウッドハウスは国民的作家で、ジーヴスは英国ではホームズと同じくらい有名です。探偵小説というよりユーモア小説でしょうか。エリザベス女王の母エリザベス皇太后はかつて『本当に欲しいものは』と聞かれて『ウッドハウスの全作品集が頂戴できますかしら』と答えています」と話す。両社の増刷分が店頭に並ぶ来週にはベストセラー入りしそうな勢いになっている。【中嶋文明】

<皇后さま誕生日ご回答>

公務を離れたら何かすることを考えているかと、このごろよく尋ねられるのですが、これまでいつか読みたいと思って求めたまま、手つかずになっていた本をこれからは1冊ずつ時間をかけ読めるのではないかと楽しみにしています。

読み出すとつい夢中になるため、これまで出来るだけ遠ざけていた探偵小説ももう安心して手許に置けます。ジーヴスも二、三冊待機しています。